サダカ(英語表記)ṣadaqa

改訂新版 世界大百科事典 「サダカ」の意味・わかりやすい解説

サダカ
ṣadaqa

喜捨〉を意味するアラビア語で,イスラム法に定めるムスリム義務としてのザカートに対し,自発的な喜捨を意味し,それが自発的であることを強調するために,とくにサダカ・アッタタッウーṣadaqa al-taṭawwu`(自発のサダカ)ということもある。コーランでは,ザカートもサダカも自発的喜捨を意味した。しかしムハンマドは630年以後,新たにイスラムの教えに従ったアラブに,サダカの名で家畜ナツメヤシの一定率の支払を強制した。家畜は種類によって率が違ったが,ナツメヤシは収穫の1/10(ウシュル)を現物で徴収し,このサダカは明らかに,イスラム法に定めるムスリムの義務としてのザカートの最初であった。イスラム法成文化の時代の学者たちは,コーランではサダカよりザカートがはるかに数多く現れるところから,義務としての喜捨をザカート,自発的喜捨をサダカと呼んだのであろう。初期の文献には,ザカートとサダカの用語上の混乱も認められる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サダカ」の意味・わかりやすい解説

サダカ
sadaqa

イスラム教徒の自発的な喜捨をさすアラビア語。ヘブライ語の sedāqāからの借用語で,本来は「信仰の正しさ」を意味する。救貧税のザカート同義語に用いられることもあるので,これと区別するために喜捨を意味するサダカを「自発のサダカ」 sadaqa al-tatawwu`と呼ぶこともある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サダカ」の意味・わかりやすい解説

サダカ
さだか

喜捨

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のサダカの言及

【イスラム】より

…なおペルシア語では,礼拝をナマーズnamāsという。 喜捨には,ザカートとサダカの二つがあり,前者はイスラム法の定めるムスリムの義務としてその所有する財産に課せられる一種の税で,貧者の救済,援助に用いられ,後者は,これに対し自発的な喜捨をさす。 断食は,ヒジュラ暦のラマダーン月(9月)の1ヵ月間,日の出から日没までいっさいの飲食を断つ(日没後は許容される)ことで,義務としての巡礼はハッジュḥajjと呼ばれ,ズー・アルヒッジャ月(12月)の8日から10日までの間,定められた順序と方法でメッカのカーバとメッカ東方の聖地を訪れることである。…

【乞食】より

…【阿部 謹也】
[イスラム社会]
 コーランは信者に対して〈その財産を,近親者,孤児,貧者,旅人,物乞い,奴隷の解放のために費やす〉べきことを繰り返し説いている。そのためイスラム社会ではこじき(スールークṣu‘lūk,ハルフーシュḥarfūsh)や貧者(ファキール)に対する自発的な喜捨(サダカ)が奨励され,施しは来世のために善行を積むことになるとみなされた。モスクに集まるこじきには入口のひさしで夜を過ごすことが認められ,礼拝を済ませた信者は,これらのこじきに相応の施しをすることが慣例となった。…

※「サダカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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