知恵蔵 「チェルノブイリ・ハート」の解説
チェルノブイリ・ハート
撮影隊は、エイディ・ロッシュが主宰するNGO「チェルノブイリ子どものプロジェクト」の支援活動に同行。放射能という「見えない暴力」の最大の被害者である子どもたちの現状を追って、国土の99%が汚染されたというベラルーシ共和国の医療施設や孤児院(遺棄乳児院)、集中治療の現場を回る。映し出されるのは、甲状腺がん手術の傷跡「ベラルーシの首飾り」が残るティーンエージャーや、水頭症などの先天性奇形で捨てられた乳幼児の姿など、目を覆いたくなるような現実の数々である。孤児たちのケアに努めるロッシュは「個々の症状に放射能の影響を特定することは難しい」と言いながら、「こうした実態が間違いなく因果関係を語る」と放射線汚染の恐ろしさを告発する。
合間には、「ベラルーシの新生児死亡率は他のヨーロッパ諸国の3倍」「ゴメリ市(原発から約80キロメートル)では事故後、甲状腺がん発生率が1万倍に増加した」などという異常な数値や、ゴメリ市立産院主任医師の「健常児が産まれる確率は15~20%ぐらい」というショッキングな発言も挿入されている。福島原発事故を受け、日本でも11年8月以降、全国各地で公開された。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報