ツチスガリ(英語表記)Cerceris hortivaga

改訂新版 世界大百科事典 「ツチスガリ」の意味・わかりやすい解説

ツチスガリ
Cerceris hortivaga

膜翅目アナバチ科の昆虫。体長7~14mm。全体に黒色で,頭部,胸部,肢に小黄紋が,腹部に黄帯がある。腹部の各節は互いに強くくびれてふしのようなので,フシダカバチ(節高蜂)ともいう。アジア大陸,ヨーロッパに広く分布する。カリバチの1種でコハナバチ類を狩り幼虫の餌として地中に巣をつくり蓄える。ツチスガリ類はコハナバチ類,ヒメハナバチ類,甲虫のゾウムシ類,タマムシ類,ハムシ類などを狩る種類がいる。日本にはコハナバチ類を狩るマルモンツチスガリC.japonica,クチブトゾウムシ類を狩るキスジツチスガリC.arenaria yanoi,ニッポンツチスガリC.nipponensisヒメツチスガリC.carinalis,カメノコハムシ類を狩るアカアシツチスガリC.albofasciataなどが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツチスガリ」の意味・わかりやすい解説

ツチスガリ
つちすがり / 土棲蜂
[学] Cerceris hortivaga

昆虫綱膜翅(まくし)目アナバチ科の1種、または同属のハチをさすこともある。この属はアナバチ科ではもっとも大きい属で、世界で850余種記録されているが、日本では14種しか記録されていない。日本産の同属のハチは体長10ミリメートル内外、黒色で種に特有の黄色斑(はん)がある。体は硬く、体表には粗大点刻がある。腹部各節間は強くくびれている。巣は神社や仏閣の境内とか運動場、山道などのつねに硬くて粘土を交えた平坦(へいたん)な裸地に深い主坑を掘り、それから枝分れした独房を設ける。各房に獲物を蓄えて、その一頭の体腹面に一卵を産む。獲物は外皮の非常に硬い甲虫目と膜翅目を狩る。日本ではツチスガリとマルモンツチスガリC. japonicaがヒメハナバチとコハナバチ類、キスジツチスガリC. arenaria yanoiとソボツチスガリC. soboがゾウムシ類、アカアシツチスガリC. albofasciataとヒメツチスガリC. carinalisがハムシ類を狩る。

[須田博久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツチスガリ」の意味・わかりやすい解説

ツチスガリ
Cerceris

膜翅目ジガバチ科ツチスガリ属の昆虫の総称狩人蜂の一つで,土中に造巣し,獲物を運び込み,これに産卵して幼虫の餌とする。体長 12mm内外の黒色のハチで,腹部に黄色い帯があり,また節間が強くくびれている。日本からは 10種ほどが知られている。獲物は甲虫目のゾウムシ,ハムシ,タマムシなどの成虫,または膜翅目のヒメハナバチ,コハナバチなどの成虫である。ツチスガリ Cerceris hortivagaは体長7~14mm,顔面の大部分は黄色で,腹部第3背板後縁沿いに黄帯をもつ。この種はコハナバチ類を狩り,北海道,本州,九州のほか,アジア東部および西部,ヨーロッパに分布する。

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