日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
ゾウムシ
ぞうむし / 象虫
象鼻虫
weevils
昆虫綱甲虫目ゾウムシ科Curculionidaeの昆虫の総称。全動物のうち種類がもっとも多い科で、世界中で約6万種、日本から600種が知られているが、実際はその2倍の種がいるものと推定されている。成虫は頭部が目の前方で細長くなって象の鼻に似た吻(ふん)となり、触角は「く」の字形で吻につく。幼虫は無脚で白いウジ虫状。この科は次の2群に大別される。
(1)短吻類 成虫の吻は短く、下唇(かしん)は口の下側を完全に覆い、幼虫は土中で生きた植物の根を食べる。雌は卵を後ろ脚(あし)で二つ折りにした葉の間や土の中に産むので、脚は産卵に適応した形をしている。老熟した幼虫は土中に蛹室(ようしつ)をつくる。羽化直後の成虫は大あごに長い牙(きば)状の付属突起があって、蛹室から地上へ出る土掘りに役だつ。地上へ出た成虫は、植物を強くかんでこの牙状突起を落としてしまう。短吻類には後ろばねの退化した種が多く、地域的に多数の種に分化したものがある。
(2)長吻類 成虫の吻は長く、下唇は口の下側を完全に覆うことはない。長い吻は産卵孔(こう)を掘る道具で、これを回転させる頭部や強く押し付ける脚の構造は産卵行動に適応し、またこの孔(あな)に差し込む膜状の産卵管の長さは吻の長さに関連する。この群の幼虫は植物組織の中を食害し、新成虫の大あごには付属突起はない。長吻類の幼虫には次の生活様式がある。種子の中にすむもの(シギゾウムシ)、つぼみや花の中を加害するもの(ハナゾウムシ、ゴボウゾウムシ、トゲムネサルゾウムシ)、生きた植物の茎に潜るもの(カツオゾウムシ、ヒメゾウムシ、サルゾウムシ)、枯れ木の材や皮下にすむもの(クチカクシゾウムシ、アナアキゾウムシ、キボシゾウムシ、キクイゾウムシ)、葉に潜るもの(ノミゾウムシ、ノコギリゾウムシ)、葉の表面をガの幼虫のように食べるもの(タコゾウムシ、タマゾウムシ)、ハバチやタマバチの虫こぶに寄生するもの(シギゾウムシの一部)など多様である。
ゾウムシ類には多数の害虫が知られ、イネミズゾウムシ、ヤサイゾウムシ、イモゾウムシ、キンケクチブトゾウムシは日本に移入した大害虫。サビヒョウタンゾウムシやクワヒョウタンゾウムシは畑作物や温室作物を加害し、コフキゾウムシ類やツメクサタコゾウムシはマメ科の牧草の害虫。キボシゾウムシやシラホシゾウムシの仲間は針葉樹の害虫である。イチゴハナゾウムシはバラやイチゴのつぼみを、ナシハナゾウムシはナシやリンゴの花を落としてしまう。土の中には目の退化したオチバゾウムシの仲間がいる。
[森本 桂]