日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハムシ」の意味・わかりやすい解説
ハムシ
はむし / 金花虫
葉虫
leaf beetle
昆虫綱甲虫目ハムシ科Chrysomelidaeの昆虫の総称。食葉性で世界各地に多くの種類が分布し、およそ3万5000の種が記録されている。普通、小形で数ミリメートルのものが多いが、1ミリメートル前後の小さい種から20ミリメートルを超す大形のものまである。形は円形または球形から細長い形まで変化があり、背面も膨れたものから平たいものまでいろいろの種類がある。また、トゲハムシ類のように棘(とげ)の生えたもの、カメノコハムシのように陣笠(じんがさ)状に周縁が広がったものもある。脚(あし)は一部を除いて一般に短いが、跗節(ふせつ)は近縁のカミキリムシ類と同じで5節あり、第3節が心臓形か二片状に広がり第4節は微小。触角は普通、糸状で短いが、体長ぐらいのものもあり、まれに先の数節が膨れたものもある。ほとんどの種類が生きた植物を食し、成虫は葉を、幼虫は葉、茎または根を食害するので、農業または林業上の害虫としてあげられるものが少なくない。たとえば、イネクビボソハムシ(イネドロオイムシ)、ウリハムシ、キスジノミハムシ、ナスノミハムシ、クルミハムシ、ブナハムシなどである。海外ではジャガイモの害虫コロラドハムシLeptinotarsa decemlineataがとくに有名で、北アメリカ南部からヨーロッパに侵入し各地に広がって大害を与えた。
ハムシ類にはかわった習性をもつものがあり、トホシハムシのように雌が卵塊と孵化(ふか)した幼虫の番をするもの、ツツハムシ類のように糞(ふん)で卵を包み独特の形にして柄(え)をつけ、葉や枝の上に直立させるもの、カメノコハムシ類のように雌が卵塊を分泌物で覆い、幼虫はイネドロオイムシのように糞を背中にのせているもの、ムシクソハムシ類のように幼虫が烏帽子(えぼし)形の殻をかぶって歩くもの、ネクイハムシのように水中に潜り、幼虫が尾端の鉤(かぎ)状の呼吸管を水草の茎に差し込んで呼吸するものなどがある。近年、アリの巣の中で生活するハムシも発見された。
ハムシ類は十数の亜科に分けられ、その一部はときに科として扱われることがある。おもな類は次のようなものである。モモブトハムシ、ネクイハムシ、ナガハムシ、クビナガハムシ、カタビロハムシ、ナガツツハムシ、ツツハムシ、コブハムシ(ムシクソハムシ)、ツヤハムシ、サルハムシ、ハムシ(ルリハムシ)、ウスバハムシ、ノミハムシ(トビハムシ)、トゲハムシ(トゲトゲ)、カメノコハムシ。以上のうち、ネクイハムシ類などは形態的にカミキリムシに似ていて細形で触角が長く、一方、マメゾウムシ科はハムシ科から分化して生じたものといわれ、それに含める人もある。
[中根猛彦]