ティリュンス(その他表記)Tiryns

改訂新版 世界大百科事典 「ティリュンス」の意味・わかりやすい解説

ティリュンス
Tiryns

ミュケナイ文明の典型的な城塞遺跡ペロポネソス半島のアルゴリス湾東岸に近い東西60~100m,南北約300mの靴底形をした丘の全体を,巨石で築いた厚い城壁でかためる。城内は南半と北半に分かれ,南部が宮殿部分。丘の東側の斜路を登ると厳重な城門に通じ,それから第1,第2の楼門をへて,ようやく柱廊に囲まれた中庭に面する大メガロンに達する。この建物に玉座があり,間口12m,奥行25.5m。中央にある炉は直径約3.3m。これに接して大浴場,婦人メガロン,小メガロンその他の独立建物が集まる。この城塞は壁画で飾られ,官女の行列,戦士たちと馬,狩りや牛跳びなどの壁画は,断片ながらミュケナイ絵画の代表作である。なお厚い城壁の東面と南面には見張り窓をもつ地下廊が通じ,持送り手法による三角形の天井は今日も現存している。城塞北半部は一段低くなり,建物の跡は乏しく,非常時の城下の住民などの避難所ともいわれる。
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百科事典マイペディア 「ティリュンス」の意味・わかりやすい解説

ティリュンス

ギリシア,ペロポネソス半島のアルゴリス湾東岸に近いミュケナイ文明の遺跡。小高い丘上には前2000年代後半に築かれた城の廃墟があり,周囲に前13世紀の城壁が残るが,前3000年ころから住居があったと考えられる。城内から壁画や板石フリーズの断片が発見された。シュリーマン発掘先鞭をつけた。1999年世界文化遺産に登録。

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世界大百科事典(旧版)内のティリュンスの言及

【城】より

… エーゲ海文明の建築では,クレタ島の宮殿には防備施設がほとんど見られない。ギリシア本土のミュケナイは巨石を積んだ城壁(前1250ころ)で囲まれているが,塔はまったく設けられておらず,ティリュンスの城砦(前1300ころ)で,はじめて側射に配慮した城壁の築き方が現れてくる。しかし,ギリシアの諸都市では,地形に応じた不整形の市城壁で囲み,側射用の角塔や升形門が備えられるようになった。…

※「ティリュンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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