ディビッグ(読み)でぃびっぐ(英語表記)Philip Hallen Dybvig

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディビッグ」の意味・わかりやすい解説

ディビッグ
でぃびっぐ
Philip Hallen Dybvig
(1955― )

アメリカの経済学者。セントルイスのワシントン大学オーリン・ビジネス・スクール教授。専門は資産評価、銀行経営、投資、コーポレートガバナンス

 アメリカのフロリダ州ゲインズビル生まれ。1976年にインディアナ大学を卒業し、エール大学で1979年に経済学博士号(Ph.D.)を取得。エール大学、プリンストン大学、西南財経大学(中国成都(せいと)市)などで教鞭(きょうべん)をとったほか、金融経済誌の編集長などを務めている。

 1983年、シカゴ大学のD・W・ダイヤモンドとの共同論文「Bank Runs, Deposit Insurance, and Liquidity」で、銀行は短期預金を集めて長期的に貸し出す「満期変換」とよばれる効率的な金融仲介機能があると同時に、風評などによる「取り付け騒ぎ(バンク・ラン)」などの脆弱(ぜいじゃく)性をあわせもつことを理論モデルとして提示した。この「ダイヤモンド・ディビッグ・モデルDiamond-Dybvig model」は広く政策設計に応用されるとともに、金融危機の分析にも活用され、預金保険制度、中央銀行の最後の貸し手としての機能、銀行の健全性を維持するバーゼル合意など、各種の銀行規制や金融制度づくりの理論的基盤となった。

 2022年、「銀行の役割、とりわけ金融危機時に果たすその役割と銀行破綻(はたん)回避の重要性を明らかにした」功績ノーベル経済学賞を受賞した。ダイヤモンドおよび、リーマン・ショック時のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB議長だったバーナンキとの共同受賞であった。

[矢野 武 2023年2月16日]

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