改訂新版 世界大百科事典 「デーバナーガリー文字」の意味・わかりやすい解説
デーバナーガリー文字 (デーバナーガリーもじ)
Devanāgarī
インドの文字。古代インドの文字であるブラーフミー文字の系統に属する。8世紀ころ,ラージャスターン,マールワー,マトゥラー,ガンガー(ガンジス)川中流域を中心に形成され,9世紀ころから広く普及し始め,10世紀以降,シッダマートリカーSiddhamātṛkā文字に取って代わるようになった。汎インド的性格をもつようになると,その名に〈デーバ(神)〉が付けられ神聖化されるようになった。現行デーバナーガリー文字によって,ヒンディー語,マラーティー語といった言語人口のかなり多い近代インド諸言語が表記されるほか,長く古典語サンスクリットの文字ともなっており,その点でインドの文字言語における重要な媒体であるといえる。
執筆者:田中 敏雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報