ラージャスターン(読み)らーじゃすたーん(その他表記)Rajasthan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラージャスターン」の意味・わかりやすい解説

ラージャスターン
らーじゃすたーん
Rajasthan

インド北西端、パキスタン国境に接する州。1956年州再編成により26の県をあわせて誕生した。面積34万2239平方キロメートル、人口5647万3122(2001)、6854万8437(2011センサス)。インド有数の人口希薄地(1平方キロメートル当り200人)で、識字率は38.6%(1991)と低く、低開発地域の一つである。ヒンドゥー教徒が多く(85%)、イスラム教徒(6%)がそれに次ぐ。州の中央を北東―南西方向にアラバリ山脈が走っている。この山脈より東はバナス平野、ハドディ高原、デカン高原などからなる起伏のある半乾燥・湿潤地域で、ガンジス川の支流のチャンバル川水系に属しており、チャンバル川用水路や溜池(ためいけ)などによる灌漑(かんがい)が進み、綿花、麦、米が産出される。州内の都市の多くもここに集中する。アラバリ山脈以西は標高400メートル以下の準平原で、タール砂漠が広がっている。このうち東半部はステップ地域でルーニ川水系に属している。灌漑によってキビ、豆類を栽培する耕地が広がり、都市も比較的多い。一方、西半部は完全な砂漠で大砂丘が発達し、人口希薄である。しかし、パキスタン国境には砂漠を緑にするラージャスターン灌漑用水路(インディラ・ガンディー運河)が建設された。産業は農業のほか綿紡績、セメント、ガラス、製糖などの工業が立地する。地下資源に恵まれ、鉛、亜鉛、粘土、大理石、銅、エメラルド、石灰、雲母(うんも)を産出する。主要都市としては、州都ジャイプルのほかウダイプルジョドプルビカネールアジメールなどがある。

[成瀬敏郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「ラージャスターン」の意味・わかりやすい解説

ラージャスターン[州]
Rājasthān

インド北西部の州。面積34万2000km2,人口5651万(2001)。州都はジャイプル。ほぼ中央部を南西から北東に走るアラバリ(アラーワリー)山脈を境にして,北西部はタール砂漠の広がる乾燥した平原地帯,南東部はデカン高原の前山部にあたる標高300~600mのやや湿潤な丘陵地帯となっている。両者は,土地利用の上でも,北西部の牧畜ラクダヤギ,羊)に対し南東部の農業(雑穀,綿,小麦)という対照性を示す。インド独立以後,北西部のタール砂漠西縁地方ではラージャスターン用水路計画が,また南東部の河谷平野ではチャンバル川用水路計画が進捗し,農業生産の伸びが著しく,最近では他州に食料を移出するほどになった。工業も州内産の綿花を原料に紡績業が諸都市に所在するほか,南東端のコーターにはナイロン,精密機械,化学などの諸工業が立地している。伝統的な手工業,とりわけシンチュウ製品,陶器,毛織物などでも名高い。アラバリ山脈は石炭のほか建築石材用の赤砂岩,大理石を,また州西部のジャイサルメールは石油を産する。

 歴史は古く,州北部のカーリーバンガンではインダス文明都市期の都市遺跡が発見されている。前2世紀から後6世紀までは,バクトリア,サカ,グプタなどの諸王朝の領域下にはいり,8世紀から12世紀にかけては州名の由来となったラージプートの諸王朝が興亡した。13~14世紀にはデリー・サルタナットに服属したが,16世紀初めにはラージプートは勢力を回復するに至る。しかし,16世紀後半にはムガル帝国に編入された。同帝国末期に小王国が分立したが,その多くは1817年ころにイギリス保護下の藩王国となった。英領時代には〈ラージプートの住む地方〉を意味するラージプターナRājputānaの名で呼ばれた。インド独立後の1956年,言語別州再編により現在の州が成立した。主要言語はラージャスターニー語であるが,ヒンディー語との共通性が大でインドの公用語とはなっていない。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ラージャスターン」の解説

ラージャスターン
Rajasthan

インド北西部の州名。北西部にタール砂漠が広がる。かつてはラージプーターナーと呼ばれ,8世紀以降,ラージプート諸王朝が割拠し興亡を繰り広げていた。これらの諸王朝は,デリー・サルタナットムガル帝国,マラーター勢力などの支配を受けたのち,19世紀前半にイギリスの保護下に入り,藩王国として存続した。インド独立後,1948~49年の諸藩王国の合併などをへて1956年に現在の州が成立した。

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