日本大百科全書(ニッポニカ) 「トスカナ派」の意味・わかりやすい解説
トスカナ派
とすかなは
scuola toscana
イタリア中部のトスカナ地方にあるフィレンツェ、シエナ、ピサ、ルッカ、アレッツォなどの諸都市で活躍した美術家に対する総称。時代も分野も限定せず、たとえば19世紀のマッキア派などをも含める場合もあるが、狭義には13世紀にトスカナで活躍した一群の画家をさす。13世紀末にチマブーエとドゥッチョが登場し、それぞれフィレンツェ派とシエナ派の開祖となるが、彼ら以前にも多くの画家がトスカナの各地に輩出していた。ルッカのベルリンギエリBerlinghieri一族、ピサのジゥンタGiunta Pisano、エンリコおよびウゴリーノ・ディ・テディチェEnrico e Ugolino di Tedice、いわゆる「サン・マルティーノの画家」Maestro di S. Martino、アレッツォのマルガリトーネMargaritone d'Arezzo、フィレンツェのコッポ・ディ・マルコバルドCoppo di Marcovaldo、シエナのグィードGuido da Sienaなどである。いずれもビザンティン美術の強い影響下から生まれた素朴な作風であるが、新しいイタリア絵画の誕生を予告する清新さと真率さとをたたえている。
[篠塚二三男]