日本大百科全書(ニッポニカ) 「トライアック」の意味・わかりやすい解説
トライアック
とらいあっく
triac
順逆どちらの方向に流れる電流でも、一つのゲート電極で同じように制御してスイッチを行うことのできる二方向3端子サイリスタ。もともとはアメリカのゼネラル・エレクトリック社の商品名であったが、IEC(国際電気標準会議)でその使用が認められ、一般名となっている。この素子は、2個のサイリスタを互いに逆向きに並列に接続し、ゲート電極を共通にした構造をもち、npnpnの5層からなるので、日本ではFLS(five layer switchの略称)ともよんでいる。 、 はその断面構造と電圧電流特性であるが、領域ⅠおよびⅡは互いに逆向きに並列接続されたpnpn構造の部分であり、領域Ⅲはこれらにさらに1層を加えたゲート部である。ゲートを用いたスイッチ動作には、素子を流れる電流の正逆二状態に対し、ゲートを流れる電流も二状態あるため4種類ある。Tが負電位でゲート信号が正の場合、領域Ⅰのp1n1p2n2がp2に直接接したゲート電極部分の動きでスイッチする。Tが負電位でゲート信号が負の場合、p1n1p2n4がT2をゲートとしてスイッチし、その結果p1n1p2n2がスイッチする。Tが正電位の場合、ゲート信号の正負によって極性は多少異なるが、ゲート信号によって注入されたキャリア(電荷担体)が次々と連鎖的に作用して領域Ⅱのp2n1p1n3をスイッチする。トライアックは以上のように両方向電流を1素子で制御できるので、交流の無段階制御に適しており、定格電流0.2~300アンペア、定格電圧50~1600ボルトの範囲のものがある。したがって、家庭用の扇風機、ルームエアコン、洗濯機、調理用ミキサーなどのモーターの回転数制御、さらには冷蔵庫、電気毛布などの温度制御から、エレベーターや交流電車の速度制御までと用途は広い。
[右高正俊]