ナシ語(読み)ナシご(その他表記)Nahsi

改訂新版 世界大百科事典 「ナシ語」の意味・わかりやすい解説

ナシ語 (ナシご)
Nahsi

チベット・ビルマ語派の中のロロ・ビルマ語群に属する言語。漢字では納西語と書く。中国雲南省麗江ナシ族自治県を中心に分布し,23万人ほどの話し手がいる。従来はモソ語Mosoと呼ばれた。基本単位は子音母音からなる開音節言語で,各音節は一つの声調をもつ。単子音39,単母音11,複母音11からなり,声調は4種ある。基本構文主語-目的語-動詞の語順をとり,主語・目的語には格助詞を付けうる。例(声調表記は省略),ŋə(n)th(to) lo〈私(は)彼(を)打つ〉。nは主格,toは対格を示す格助詞。疑問文には文末に疑問詞を添える構文と肯定表現と否定表現を並べる構文があるが,前者は疑問詞を含むか否かによってビルマ語と同じく,leとlaの2形式が使い分けられる。形容詞名詞の後に置かれるが属格助詞をともなって前に置くことも可能である。量詞(類別詞)は豊富で,数詞を含む名詞句のみではなく,指示詞に限定される名詞句にも,名詞-数詞(または指示代名詞)-量詞の型が使われる。例,çi d ku〈ひと一人〉,γ th phu〈あの牛〉(斜字は量詞)。指示代名詞は,近称,遠称,最遠称に3分割される。漢語中国語)からの借用語多く,解放後の新しい用語・術語はすべて普通話(プートンホワ)から入り,雲南のチベット語からの借用語も少なくない。西部・東部の2方言に大別される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のナシ語の言及

【チベット・ビルマ語派】より

… (d)リス(傈僳)語系 雲南省,カチン州,シャン州,タイ国北部に分布するリス語とラフ(拉祜)語などがある。 (e)ナシ(納西)語系 雲南省西北部で話され,口語音と読書音がある。 (f)ミ語系 11世紀から13世紀に河西地域に建てられた西夏国の公用語西夏語のほか,現在四川省で話されるミニャック(木雅)語が属する。…

【ロロ・ビルマ語群】より

…シナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派に属する言語群で,ビルマ語イ(彝)語(ロロ語),リス語,ラフ語,アカ語,ナシ語(モソ語),西夏語,カチン語,ヌン語,ピュー語などが含まれる。ビルマ語に最も近い言語としてはマル,ラシ,アツィ,アチャン,ポン,マルマの諸言語がある。…

※「ナシ語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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