( 1 )現代日本語の指示詞(指示語・指示代名詞)は、語頭にコを持つもの、ソを持つもの、アを持つものに分けられ、それぞれ整然とした体系をなす。疑問・不定語であるド(どれ、どこ、…)の系列とあわせてコソアドと称することもある。
( 2 )指示対象の意味範疇、および指示詞の文法的機能に対応して語尾の形式が分化する。ものや事柄を表わす「これ、それ、あれ、(どれ)」、場所を表わす「ここ、そこ、あそこ、(どこ)」、ものや人(卑称)を表わす「こいつ、そいつ、あいつ、(どいつ)」、方向を表わす「こちら、そちら、あちら、(どちら)」および「こっち、そっち、あっち、(どっち)」(以上、名詞的)、名詞を修飾して指定する「この、その、あの、(どの)」、名詞を修飾し、状態を表わす「こんな、そんな、あんな、(どんな)」(以上、連体詞・形容詞的)、動詞・形容詞を修飾し、様態を表わす「こう、そう、ああ、(どう)」(副詞的)など。
( 3 )用法は、目の前の物を指し示す現場指示と、それ以外の対象を指し示す文脈指示に大きく分けられる。現場指示では、コの系列は話し手の勢力範囲(主に話し手の手の届く範囲)の対象、ソの系列は聞き手の勢力範囲(主に聞き手の手の届く範囲)の対象および話し手・聞き手からやや離れた場所にある対象、アの系列はそれ以上離れた場所にある対象を指し示す場合が多い(ただしさまざまな物理的・心理的要因により、この範囲は伸縮する)。
( 4 )文脈指示では、ソが最も広範に用いられ、当該の指示詞より以前のテキスト中の要素を指し示す。アは、話し手が直接経験として知っている対象を指し示す。ただし聞き手が直接経験していない対象については、ソを用いて指示する場合が多い。コは、当該の指示詞より以前のテキスト中の要素のうち、話し手のみが直接経験として知っている対象を指し示し、説明を加える場合によく用いられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…個体距離は二つあるいはそれ以上の個体間においてみられる距離であるが,その基礎には,個体ごとに占有する空間というものがあるはずである,というのがホールの主張である。 指示詞は,世界のどの言語にもみられる語群であり,かつ距離的な認識をその語の中に含んでいる。約500の言語の指示詞に関する空間的意味成分の分析から,人間は自己を中心とした,かなり普遍的な同心円状の距離的空間認識を潜在的にもっていることが明らかになった。…
※「指示詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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