日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニクソン・ドクトリン」の意味・わかりやすい解説
ニクソン・ドクトリン
にくそんどくとりん
The Nixon Doctrine
アメリカの対外安全保障政策の一つ。新太平洋ドクトリンともよばれる。ベトナム戦争の泥沼にはまったジョンソン政権の後を継いだニクソン大統領は、1969年7月26日、グアム島でアジア戦略の基本戦略(グアム・ドクトリン)を公表、〔1〕条約上の責務を守る、〔2〕同盟国の自由またはアメリカの安全が脅かされれば核の傘を提供、〔3〕その他の侵略には基本的に各国の自衛努力による、ことを宣言したが、翌70年2月18日公表の外交教書で、前述の戦略を全世界に拡大適用することを発表、以後この戦略はニクソン・ドクトリンとよばれるようになった。これは、(1)同盟諸国とのパートナーシップ、(2)アメリカの安全を脅かす国には「力による対決」を行うこと、(3)平和のための「交渉」の重視、を内容とした。とくに(1)は、同盟諸国の自助およびアメリカの地上軍負担の軽減を強調したもので、単に当時のベトナム戦争に関してだけでなく、その後の歴代政権の世界的基本戦略となった。これは、大量のアメリカ地上軍を投入して失敗したベトナムでの教訓を取り入れたものとされている。
[陸井三郎]