改訂新版 世界大百科事典 「ハイブリッド航空機」の意味・わかりやすい解説
ハイブリッド航空機 (ハイブリッドこうくうき)
hybrid aircraft
例えば,ヘリコプターに飛行機の固定翼をつけることによって,ヘリコプターのもつ垂直離着陸特性およびホバリング特性と,飛行機の高速性をあわせもたせるなど,互いに特性の異なる航空機の長所を組み合わせてつくられる航空機をハイブリッド航空機という。ハイブリッドとはあいのこ(雑種)の意味。上述の例は翼付きヘリコプターと呼ばれるが,ハイブリッド航空機には,このほかグライダーに低馬力の推進装置をつけ,自力によって離陸できるとともに滑空も行えるモーターグライダー,飛行機に自由回転をする回転翼を備えオートローテーション着陸や短距離での離陸が行えるようにしたオートジャイロ,翼付きヘリコプターにさらに推進器まで備えた複合ヘリコプター(コンパウンドヘリコプター)などがある。このように他の航空機の特性を加え合わせることによって,現在では広告などごく限られた分野にしか利用されていない飛行船にも新しい用途が開ける可能性がある。飛行船は巨大なため運動性が悪く,とくにホバリングを含む低速時で舵が効かない。この欠点を補うために,ヘリコプターの回転翼を取り付けて,低速での制御能力を与えることができれば,重量物の荷役作業に使える。このような発想から計画されているのがハイブリッド飛行船で,速度が遅いという欠点は残るが,運用方法によっては十分採算がとれると考えられている。なお,垂直離着陸特性をもった飛行機は垂直離着陸機と呼ばれるが,前述の複合ヘリコプターはこの一形式ともいえる。
執筆者:東 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報