1931年にドイツのヒュッケルによって発表された、芳香族化合物の安定性に関する理論的法則。4n+2則ともいう。この法則によれば、有機化合物が芳香族性をもつためには、(1)分子が平面構造の環状共役π(パイ)電子系をもち、π電子が非局在化していること、(2)π電子が4n+2個存在することが必須(ひっす)である。この法則を証明する実験事実が次々と得られ、4n+2個のπ電子をもつ非ベンゼン系芳香族化合物が多数合成されている。
[向井利夫・廣田 穰 2015年7月21日]
完全に共役した平面型シクロポリエンのうち,環内のπ電子の数が4n + 2(n = 0,1,2,…)のときにπ電子の非局在化によって特殊な安定性(芳香族性)がみられるという法則.E. Hückel(ヒュッケル)(1931年)が分子軌道理論にもとづいて導き出した.すなわち,環内π電子の数が2,6,10,14,18,…のものは芳香族性を示すが,4,8,12,…のものは芳香族性を示さない.これらの系はいろいろ合成され,ヒュッケル則の正しいことが実証されている.ヒュッケル則を満足する代表的な化合物には,n = 0(2π電子系)のシクロプロペニルカチオン,n = 1(6π電子系)のシクロペンタジエニルアニオン,ベンゼン,シクロヘプタトリエニルカチオン,n = 2(10π電子系)の1,6-メタノ-[10]アンヌレン,n = 3(14π電子系)の[14]アンヌレン,n = 4(18π電子系)の[18]アンヌレンなどがある.[別用語参照]芳香族性,非ベンゼノイド芳香族化合物
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…事実,ベンゼンの炭素―炭素結合の長さはすべて等しく,1.397Åであり,純粋な二重結合(1.388Å)と単結合(1.479Å)の長さの平均値にだいたい一致する。 このようなベンゼンの安定性を理論的に説明するために,1931年ドイツのヒュッケルErich Armand Arthur Joseph Hückel(1896‐1980)は分子軌道法を用いてヒュッケル則を提出した。ヒュッケル則によれば,4n+2個(n=0または自然数)のπ電子をもつ環は安定で芳香族性を示す。…
※「ヒュッケル則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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