マクドナルドが販売するハンバーガー「ビッグマック」1個の値段を基に、世界各国の通貨で購入できる購買力(消費の量)を比べる指標。イギリスの経済誌『エコノミスト』が1986年に考案し、毎年公表している。自由貿易市場の場合、同一の物やサービスの価格は長期的にはどの国でも同じ価値へ収斂(しゅうれん)するように為替(かわせ)取引で調整されるという購買力平価説に基づき、マクドナルドが世界100か国以上で販売するビッグマックの価格を基準に、各国の購買力を比較する指標である。一般にビッグマックは、広範囲の国・地域でほぼ同じ品質の商品として売られており、原材料費、人件費、光熱費、地代家賃などを基にその国の販売価格が決まる。このためビックマック指数を使えば、各国の購買力を比べる際の参考になるとの考え方に基づいている。ビッグマック指数は、ビッグマックというなじみのある商品を例に、簡便に各国の購買力を比べられるため、マスコミなどで紹介されるケースが多い。なお類似指標には、スターバックス社のトール・ラテ価格を比べた「スターバックス指数」、アップル社のオーディオプレーヤーiPod(アイポッド)価格を比べた「iPod指数」などがある。
たとえば、ある時点でビッグマック価格がアメリカで5ドル、日本で400円であった場合、1ドル=80円がビッグマック指数となる。しかし同時点の実際の為替水準が1ドル=110円ならば、この為替水準はビッグマック指数に比べて円安・ドル高であり、今後、為替相場が円高・ドル安へ進むだろうとみることもできる。つまりビッグマックが安く買える国の通貨ほど、その通貨は過小評価されており、その後、その通貨は高くなるだろうとの予測の根拠の一つを提供することになる。ただ国によってビッグマックの大きさや栄養価には違いがあるうえ、販売価格は付加価値税率(消費税率)や農業補助金などで左右される。そもそもビッグマックという一つの商品をもって国と国の間の購買力の違いを比べるのは経済学的に無理があり、ビッグマック指数は経済学的に厳密な指数でない点に注意しなければならない。
[矢野 武 2018年10月19日]
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