出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…悪魔は彼に魔術の世界を開く鍵を伝授し,数々の奇跡を実行する能力を彼に授けたのである。これに続いてまずイギリスのC.マーロー(1588)が,ドイツではレッシング(断片),ゲーテ,F.M.クリンガー(1791),N.レーナウ(1836),ハイネ(1851,バレエ台本),20世紀に入って,トーマス・マンの《ファウスト博士》(1947),バレリーの《モン・フォースト》(1946)がこのテーマを扱い,ファウスト伝説を豊富にした。ファウスト〈テーマ〉は救済型と破滅型に分かれるが,ゲーテのファウストのみが救済され,他はそれぞれの時代思潮からとられたテーマに従って一般に破滅型である。…
…29年ノーベル文学賞を受けたが,33年ヒトラーの政権掌握後マンは国外講演旅行に出たまま帰国を断念,52年ヨーロッパに戻るまで主としてアメリカで亡命生活を送った。その間第2次大戦たけなわの頃書き始めた《ファウスト博士》(1947)は,ファウスト的・ニーチェ的主人公に托してドイツの運命を描いた作品で,ドイツの〈自己批判の書〉と評価されている。第2次大戦後,ドイツの東西分割に表現される東西対峙のなかで,この状況に批判的なマンの政治姿勢は世界的に高く評価されていた。…
※「ファウスト博士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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