化学辞典 第2版 の解説
フラビンアデニンジヌクレオチド
フラビンアデニンジヌクレオチド
flavin adenine dinucleotide
C27H33N9O15P2(785.56).略称FAD.フラビン酵素の補欠分子族の一つ.フラビンモノヌクレオチド(FMN)とアデニル酸(AMP)との結合物で,イソアロキサジン環が酸化型および還元型をとることによって,生体の酸化還元系で水素伝達の作用をする重要な物質である.酵母,ウマの心筋,腎臓,肝臓などから抽出精製することができる.このような非対称ピロリン酸エステルの合成は困難であったが,リン酸アミデート法により,FMNとAMPから合成されるようになった.橙黄色の結晶様粉末.黄緑色の蛍光を出す.λmax 370,450 nm,還元型は450 nm の吸収を示さない.水に易溶,アルコール類に微溶.生体内では,アミノ酸,カルボン酸,還元NAD,チオール基などの酸化反応の補酵素として作用する.とくに重要な作用としては,生体の酸化的リン酸化に関与していることである.すなわち,ミトコンドリアにおける電子伝達系の中枢的位置に二つのフラビン酵素があり,この活性によってATPの生成が左右される.[CAS 146-14-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報