アデニル酸(読み)アデニルサン

化学辞典 第2版 「アデニル酸」の解説

アデニル酸
アデニルサン
adenylic acid

adenosine monophosphate.C10H14N5O7P(347.22).プリンヌクレオチド一種で,リボ核酸(RNA)の構成成分.リン酸結合位置によって,アデノシン5′-一リン酸(Ⅰ,略号AMP),3′-一リン酸(Ⅱ)および2′-一リン酸(Ⅲ)の3種類の異性体が存在するが,通常は(Ⅰ)をさす.【】5′-アデニル酸:筋肉アデニル酸ともよばれ,ATPADPの分解によって生成し,筋肉中に比較的多量に存在する.リン酸の代謝やエネルギー代謝に重要な物質である.有機化学的に合成できるが,リボ核酸の酵素分解によっても得られる.安定な針状結晶.分解点196~200 ℃.-47.5°(2% 水酸化ナトリウム),-26.0°(10% 塩酸).pKa1 3.8,pKa2 6.2,pKa3 13.1.熱湯に易溶.亜硝酸あるいは酵素的に脱アミノ化されて肉のうま味成分であるイノシン酸になる.血圧や腸の運動を低下させる作用がある.[CAS 61-19-8][別用語参照]アデノシン5′-三リン酸】2′-および3′-アデニル酸:リボ核酸のヌクレオチド間の結合は3′および5′であるが,それをアルカリ加水分解すると,これらの混合物が生成し,両者は2′,3′-モノリン酸を経て相互変換する.5′-アセチルアデノシンリン酸化によってもこれらの混合物が合成され,イオン交換クロマトグラフィーで両者を分離することができる.(Ⅱ)は分解点195 ℃.-45.4°(0.5 mol L-1Na2HPO4).(Ⅲ)は分解点187 ℃.いずれもアンモニア,水に易溶.[CAS 130-49-4:2′-アデニル酸][CAS 84-21-9:3′-アデニル酸]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アデニル酸」の意味・わかりやすい解説

アデニル酸
あでにるさん

アデノシンのリン酸エステルで、リン酸の結合位置により2'-、3'-、5'-の3種の異性体がある。核酸の構成単位であるヌクレオチドの一つで、アデノシン一リン酸(AMP)ともいう。プリン塩基の一種であるアデニン、五炭糖(ペントース)であるD-リボース、リン酸が1分子ずつ結合したもの。RNA(リボ核酸)をRNA加水分解酵素や酸・塩基などで分解すると得られるが、単独でも生体内に存在する。核酸以外にも、いろいろ重要な生体物質の構成成分になっている。ことにNAD(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)、補酵素A、FMNフラビンモノヌクレオチド)などの補酵素の一部である。またATP(アデノシン三リン酸)はアデニル酸にリン酸が2分子結合したものである。3'-、5'-環状アデニル酸(サイクリックAMP)もアデニル酸の一種ともいえる。したがって生物界においては、他のヌクレオチドに比べてとくに重要な役割をもっている。RNAを適当な酵素で分解した場合、リボースの3位にリン酸が結合した3'-アデニル酸(3'-AMP)が得られるが、生体内に主として存在するのは、リボースの5位にリン酸が結合した5'-アデニル酸(5'-AMP)である。

[笠井献一]

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栄養・生化学辞典 「アデニル酸」の解説

アデニル酸

 C10H14N5PO7 (mw347.22).

 アデノシン5-一リン酸,アデノシン一リン酸ともいう.リン酸基がさらにATPによりリン酸化されてアデノシン5-二リン酸(adenosine 5-diphosphate, ADP),さらにリン酸化されて,アデノシン5-三リン酸(adenosine 5-triphosphate, ATP)になる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アデニル酸」の意味・わかりやすい解説

アデニル酸
アデニルさん
adenylic acid

アデノシンのD-リボースの水酸基の 2' -,3' -,5' - のいずれかの位置にリン酸が結合したもの (分子式 C10H14N5O7P ) の総称。アデノシン一リン酸ともいい,AMPと略す。 3' - および 2' - 結合アデニル酸は古くは酵母アデニル酸ともいわれ,生体内には遊離状態ではほとんど見出されず,リボ核酸の酸加水分解の際に2次的に生成される。 5' - アデニル酸は細胞内に遊離状態で存在し,古く筋肉アデニル酸ともいわれた。 ATP+AMP⇔2ADP などの反応によって,エネルギー代謝,リン酸代謝の中心物質であるアデノシン三リン酸 ATPと関係がある。

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