フー(読み)ふー(その他表記)The Who

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フー」の意味・わかりやすい解説

フー
ふー
The Who

1960~1970年代のイギリスを代表するロック・グループ。日本では長らく正当な評価を受けてこなかった感があるが、英米での人気と評価は非常に高く、同世代のロックから1970年代のパンクにまで、世代を超えた大きな影響を与えた。

 レパートリー大半の作詞作曲を担当するピート・タウンゼンドPete Townshend(1945― 、ギター)と、ロジャー・ダルトリーRoger Daltrey(1944― 、ボーカル)、ジョン・エントウィッスルJohn Entwistle(1944―2002、ベース)、キース・ムーンKeith Moon(1947―1978、ドラム)のメンバー全員がロンドンの生まれ。同じ学校に通っていたタウンゼンドとエントウィッスルは10代前半から一緒にバンドを組んでいた。1962年にエントウィッスルがダルトリーの結成したディトアーズに参加。彼の推薦でタウンゼンドも加わり、それまでギターも担当していたダルトリーは歌に専念する。そして1964年初めにドラマーがムーンに交替し、グループ名をフーとした。

 同年にいったんグループ名をハイ・ナンバーズに変え、デビュー・シングル「アイム・ザ・フェイス」を発売するがヒットせず、元のフーに戻した。その後、ロンドンのマーキー・クラブで定期出演を始めると、そのワイルドでエキサイティングなパフォーマンスがたちまち評判を呼び、クラブには毎夜満員の客が押しかけるようになった。

 1965年「アイ・キャント・エクスプレイン」で再デビュー。若者のいらだちを伝える曲と「マキシマム・リズム・アンド・ブルース」と称された力強いサウンドが人気をよび、とりわけ当時のロンドンの風俗だったモッズ族(1960年代ロンドンで若者に流行したファッション・音楽スタイル。名前はモダンズ(moderns)からきている)の若者から強い支持を受ける。同年全英第2位まで上がったヒット曲を表題にしたデビュー・アルバム『マイ・ジェネレイション』を発表。「老いぼれるまでに死にたい」という有名な一節を含むタイトル曲は1960年代の若者たちの考え方や行動を賛美し、若者たちにとっての賛歌となった。

 1966年には「サブスティテュート」や「アイム・ア・ボーイ」などがヒットし、アルバム第2作『ア・クイック・ワン』を発表する。1967年夏に初めての全米ツアーを行い、またモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演し、ギターやドラムを破壊する激しいパフォーマンスが評判をよび、アメリカでも一躍人気を得た。年末には海賊ラジオ局へのオマージュの形をとった3作目『ザ・フー・セル・アウト』を発表するが、これはコンセプト・アルバムのはしりだった。

 1969年に初のロック・オペラ作品『ロック・オペラ“トミー”』を発表。三重苦の主人公がピンボールを通して救済をみつける精神的な旅の物語は評論家から激賞され、アルバムは2枚組にもかかわらず大ヒット。1975年にはケン・ラッセル監督で映画化もされた。この1969年にはウッドストックとワイト島(翌1970年も出演)での二つの大規模な野外フェスティバルに出演し、またヨーロッパ各地のオペラ・ハウスで『トミー』を演奏するツアーを行った。1970年にはロック史上で最高のライブ・アルバムの1枚ともよばれる『ライヴ・アット・リーズ』を発表するが、その夏の全米ツアーではスポーツ・アリーナ級の大会場ばかりを回るようになり、「世界最高のライブ・ロックン・ロール・バンド」と称された。1971年前半に新しいロック・オペラ『ライフハウス』の制作を進めるが、結局その野心的なプロジェクトは頓挫し、挿入曲を集めたアルバム『フーズ・ネクスト』を発表。同アルバムは全英第1位、全米第4位の大ヒットとなり、フーの最高傑作と絶賛された。ダイナミックなハード・ロックにいち早くシンセサイザーを取り入れたこのアルバムは1970年代ロックのサウンドと感性を定義づけた作品といえる。

 1970年代のフーは、モッズの少年を主人公にしたコンセプト・アルバムで、1979年に映画化もされた『四重人格』(1973)などのアルバムを発表し、ツアーも精力的に行いながら、各メンバーもそれぞれソロ・アルバムを発表した。ところが、1978年9月7日にムーンがアルコール依存症治療用薬物の過剰摂取で死亡。残された3人は元フェイセスのケニー・ジョーンズ Kenny Jones(1948― )を加えて活動を続け、2枚のアルバムを制作するが、結局1982年に解散を発表した。

 しかし、1985年のライブ・エイド(アフリカの飢餓救済のためにアメリカ、イギリスのミュージシャンにより行われたチャリティー・ライブ)などの機会に再び集まって演奏することがあり、1989年には結成25周年記念として大々的な再結成ツアーを決行した。その後も1999年、2000年、2002年にツアーを行うが、2002年のツアーの開始前夜にエントウィッスルが亡くなった。

 1990年にロックン・ロールの殿堂入りを果たす。1993年には『トミー』がブロードウェーでミュージカル化されて大評判をよび、音楽監督を務めたタウンゼンドがトニー賞の最優秀オリジナル・スコア賞を獲得したほか、5部門で受賞した。

[五十嵐正]

『クリス・チャールズワース著、藤林初枝訳『ザ・フー全曲解説』(1996・バーン・コーポレーション)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「フー」の解説

フー

NHKの子供向けテレビ番組『ブーフーウー』(1960年放映開始)に登場するキャラクター。童話『三匹のこぶた』をモチーフにした小ブタ。三兄弟の次男。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のフーの言及

【道化】より

…語源については,〈童戯〉〈戯気(たわけ)〉〈おどけ〉,斎藤道三(どうさん)の家来の〈道家某〉という名の転訛とするなど,諸説がある。英語のフールfool,フランス語のフーfou,ドイツ語のナルNarrは,愚者,まぬけ,職業的道化師など多様な意味内容をもつ。foolの語源はラテン語のフォリスfollis(〈ふいご〉の意)で,道化の無内容な言葉を〈風〉にたとえたと思われる。…

※「フー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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