日本大百科全書(ニッポニカ) 「タウンゼンド」の意味・わかりやすい解説
タウンゼンド
たうんぜんど
John Rowe Townsend
(1922―2014)
イギリスの児童文学評論家・作家。イングランド北部のリーズに生まれ、ケンブリッジ大学エマニュエル・カレッジに学び、新聞記者生活を経て児童文学に転じた。評論活動の最初の成果『子どもの本の歴史』を1965年に出版し、以後児童文学の進歩とともに増補改訂を行い1990年の5版が最終版となった。子供の文学を文学全体の歴史のなかでみる視点は、時代観、作品評価など、多くの面で新しい示唆を与え20世紀後半の児童文学の発展に大きな寄与をした。英語圏の現代児童文学作家を論じた『英米児童文学作家論』2巻(1971、1979)は、20世紀後半の代表的作家を特定し、作家作品論の一つの型を提示した。
評論・研究同様に、創作面も多彩で、最初の小説『ぼくらのジャングル街』(1961)と続編『さよならジャングル街』(1965)、『アーノルドのはげしい夏』(1969)は、子供たちと彼らを取り巻く状況を冷静に描いて、児童文学の概念を打破し、この分野のリアリズムを深化させる力となった。
彼は物語の意味と効用を強く意識し、現在の行き着く姿を探る近未来小説『ノアの城』(1975)や、未来からきた娘と現代の青年の恋愛を軸に、現在を考え、進歩や変化の意味を探る一種のSF物語『未知の来訪者』(1977)などを発表している。その一方で、そそっかしいが才能のあるカメラマンの卵と、豊かな知識階級の娘との牧歌的な恋愛を扱った『愛ときどき曇り』(1984)などをも著して、児童文学の多様性を改めて認識させた。
[神宮輝夫]
『亀山竜樹訳『さよならジャングル街』(1970・学習研究社)』▽『亀山竜樹訳『北風の町の娘』(1971・学習研究社)』▽『亀山竜樹訳『ぼくらのジャングル街』(1976・学習研究社)』▽『山口昌子訳『翼がほしい!――発明の父レオナルド・ダ・ヴィンチ』(1978・篠崎書林)』▽『神宮輝夫訳『ぼくのあそびば』(1979・岩波書店)』▽『神宮輝夫訳『海賊の島』(1979・岩波書店)』▽『神宮輝夫訳『アーノルドのはげしい夏』(1984・岩波書店)』▽『斉藤健一訳『ハルシオン島のひみつ』(1987・ベネッセコーポレーション)』▽『神宮輝夫訳『愛ときどき曇り』(1988・晶文社)』▽『神宮輝夫訳『ひとりぼっち』(1988・晶文社)』▽『神宮輝夫訳『未知の来訪者』(1991・岩波書店)』▽『高杉一郎訳『子どもの本の歴史――英語圏の児童文学』上下(1992・岩波書店)』▽『エドワード・ブリッシェン編、神宮輝夫訳『とげのあるパラダイス――現代英米児童文学作家の発言』(1982・偕成社)』▽『神宮輝夫著『現代イギリスの児童文学』(1986・理論社)』▽『本多英明ほか著『楽しく読める英米児童文学』(2000・ミネルヴァ書房)』