改訂新版 世界大百科事典 「プリアポス」の意味・わかりやすい解説
プリアポス
Priapos
古代のヘレスポントス(ダーダネルス海峡)地方,とりわけ小アジア側の町ランプサコスで崇拝された豊穣多産の神。巨大な男根をもって象徴され,もっとも性欲の激しい動物と信じられたロバが犠牲に供された。アレクサンドロス大王の東征以後,彼の崇拝がギリシア各地,さらにはイタリアにまで広まると,彼は果樹園や農園の守護神とされて,通例,イチジクの木に勃起した男根を刻んで朱を塗った神像が立てられ,かかしと装飾の用を兼ねた。神話では,一般にディオニュソスとアフロディテの子とされるが,ヘレニズム時代以降,彼の父親をゼウスとしたり,美青年アドニスとするなどの諸説が唱えられた。またギリシア,ローマの詩人たちは彼に呼びかける卑猥な内容の詩を多数つくったが,現存する作品としては,アウグストゥス帝の時代に編まれたラテン語による80編の詩集《プリアペイア》が主要なものである。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報