日本大百科全書(ニッポニカ) 「へら」の意味・わかりやすい解説
へら
へら / 篦
竹、木、金属などで、用途によって細長く、薄く、平らにつくり、先端をとがらせるか、または丸みをつけた道具。糊(のり)、漆、絵の具、陶土などを、こねたり、塗ったり、形づけするのに用いる。そのほか、小紋、長板中形、型友禅などの捺染(なっせん)用具としても使われる。長板に反物を張り伸ばし、その上に型紙をのせ、上から駒(こま)べら、出刃べらで防染糊や色糊をつける。
和裁用具としては、綿布や麻布に印をつけるのに用い、象牙(ぞうげ)、角(つの)、骨、合成樹脂製がある。長さは10~13センチメートル、幅2~3センチメートルの握りやすい大きさで、厚さは3ミリメートル内外、先端の印をつける個所は半円形で1ミリメートル内外の薄さにし、滑らかにつくってある。このへらは、古く公家(くげ)社会の女性の化粧道具の一つで、象牙でつくられ眉(まゆ)を描くのに用いられていた。これが江戸時代に綿入れ長着の衽(おくみ)の褄(つま)の印つけに使われるようになった。へらという名称が一般的となったのは明治以後のことである。印つけの方法は、袖(そで)の丸みなどは通しべらにするが、直線縫いの印は、和服地を傷めないように1~2センチメートルの長さで、15~20センチメートル間隔につける。印のつけにくい絹、薄地毛織物には先端の丸いこてを用いて焼きべらをする。さらに印がつけにくい厚地毛織物、熱に弱い合繊地には、へらのかわりに糸印(いとじるし)の方法を用いる。
[岡野和子]