日本大百科全書(ニッポニカ) 「シレノス」の意味・わかりやすい解説
シレノス
しれのす
Silenos
ギリシア神話に登場する山野の精。セイレノスともいう。サティロスとよく似ており、同じくディオニソスの従者。山羊(やぎ)的要素の濃いサティロスに対し、シレノスは馬的要素が濃く、馬の耳、足、尾をもつ。またサティロスよりも年寄りで、より賢く、預言術や音楽に精通しているため、ディオニソスの養育係ともみなされた。のちにソクラテスがシレノスになぞらえられたのは、その容貌(ようぼう)の醜怪な点だけではなく、その知の深さと皮肉好きな点の相似にもよるとされる。またサティロスよりもさらに酒好きで、飲むと歌い踊り、ニンフや、ときにはヘラ、イリスなどの女神をも追いかけ回した。あるとき、シレノスはこの酒好きをつけこまれてフリギアのミダス王に酔わされ、捕まえられるが、歓待されたため、これを喜んだディオニソスは、ミダス王の、すべてのものが黄金になるようにという願いをかなえてやったという。
[丹下和彦]