ヘールシルト(英語表記)Heerschild

改訂新版 世界大百科事典 「ヘールシルト」の意味・わかりやすい解説

ヘールシルト
Heerschild

中世ドイツにおけるレーン制封建制度)ないしレーン法上の概念。文字どおりには〈兵の章盾〉であり,12世紀以前の史料では封臣から軍役を要求する権利そのものを意味していたが,12世紀に帝国国制のレーン制的編成が進展し,その全体的整序が要請されるとともに,この概念はレーンの授受能力ならびにレーン制的階層構成を表すレーン法上の一つのキーワードになった。

 当初の単純な3階層構成(国王-国王直属封臣-下位封臣)は,13世紀の法書段階になると,六ないし七つのヘールシルトに分化する。例えば,ザクセンシュピーゲルはレーン制の階梯を,(1)国王,(2)聖界帝国諸侯,(3)世俗帝国諸侯,(4)伯および貴族,(5)参審自由人とミニステリアーレ,(6)(5)の者たちの封臣,(7)その他,の7段階に分けている。(7)のヘールシルトの保持者は,レーンを受領しうるのみで他人にそれを与える能力のない騎士と規定される。そして,一般に同格者からレーンを受領すると,彼のヘールシルトは1段階下降するものとされた。このようにヘールシルト制は,封建的諸身分のカースト的閉鎖化を志向するものであったが,とくに帝国諸侯身分とその他の貴族との間に厳格な一線が画されたことは,実際に帝国諸侯権力の強化と伯を含むその他の貴族の陪臣化を促すのに役だった。レーン制的軍役体系を軸にして構成されたこの秩序は,レーン制の軍事的役割そのものが低下する14世紀になるとその意義を失う。
封建制度
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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