改訂新版 世界大百科事典 「ザクセンシュピーゲル」の意味・わかりやすい解説
ザクセンシュピーゲル
Sachsenspiegel
ドイツ中世の最も重要な法書(私人の著した法の記録)。1221-35年に,ザクセンの騎士で参審員でもあったレプゴウEike von Repgow(1180ころ-1235以後)によって著され,〈ラント法〉3巻と〈封建法(レーン法)〉1巻から成る。〈序詩〉によれば,はじめラテン語で書かれ,主君の懇望によってドイツ語に訳されたというが,現在残されている最古の版は中世低地ドイツ語のものである。成立後まもなく,ザクセンを中心とする北ドイツ一帯に急速に普及して,14~15世紀には〈法典〉に匹敵する権威を獲得し,近世の〈普通ザクセン法〉の基礎となった。また,高地ドイツ語,オランダ語,ポーランド語などにも翻訳されただけでなく,マクデブルク都市法を通じて東欧の諸都市にも大きな影響を与えた。さらに,本書の高地ドイツ語訳がもととなって,〈ドイチェンシュピーゲルDeutschenspiegel〉〈シュワーベンシュピーゲル〉が編まれたところから,ドイツにおける法書の歴史はザクセンシュピーゲルの影響の歴史であると言われるほどである。本書に記録されている法は,かつては純粋に〈ゲルマン的〉な〈慣習法〉と考えられたが,近時,成立の機縁,内容(特に〈平和〉に関する諸規定),普及の法源論上の根拠等について,教会法・ローマ法の影響が注目されている。
執筆者:石川 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報