ベックウィズ‐ビーデマン症候群(読み)べっくうぃずびーでまんしょうこうぐん(英語表記)Beckwith-Wiedemann syndrome

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベックウィズ‐ビーデマン症候群
べっくうぃずびーでまんしょうこうぐん
Beckwith-Wiedemann syndrome

遺伝子刷り込み(ゲノムインプリンティング)の異常によって起こる症候群の一つ。先天的な過成長を示し、臍(さい)ヘルニアなどの腹壁欠損(exomphalos)、巨舌症(macroglossia)、巨人症(gigantism)の三つを主徴とする。名称はこの症状を発表したアメリカの小児病理学者ベックウィズJohn Bruce Beckwith(1933― )とドイツの小児科医ビーデマンHans Rudolf Wiedemann(1915―2006)にちなんだもので、BWSと略される。主徴三つの頭文字をとってEMG症候群ともよばれる。また、「臍(帯)ヘルニア巨舌巨人症症候群」ともいう。単一発症がほとんどであるが、まれに常染色体顕性遺伝の家族発生例も報告されている。出生時体重は4000グラムほどもあり、ほかに肝臓、腎臓(じんぞう)、膵臓(すいぞう)などの臓器肥大(内臓肥大症または内臓巨大症)や眼球突出もみられる。巨人症は成人して半身肥大となることも多い。また膵臓のランゲルハンス島過形成により、新生児期の低血糖や高インスリン血症などを呈するのも特徴で、インスリンの過剰分泌が疑われている。知的障害を伴うことはほとんどない。治療は、低血糖を改善するために、インスリンの分泌抑制と血糖値上昇を目的としてブドウ糖や副腎皮質ホルモンを投与、および高インスリン血性低血糖治療薬のジアゾキシドを投与する。悪性腫瘍(しゅよう)の発生率が高く、膵島B細胞(β(ベータ)細胞)の肥大やB細胞腫瘍に対して膵臓の亜全摘手術が選択されることもある。

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