身長が異常に伸びて、同性同年齢平均身長の標準偏差の3倍以上高くなった場合をいうが、代表的なものは下垂体性巨人症である。脳の下垂体から分泌される成長ホルモンの異常増加が、骨の成長する骨端線閉鎖以前、いわゆる二次性徴(すなわち男性では声変わりがおこったりひげが生え、女性では月経が始まるなど)が現れる前におこると、骨が長軸方向に伸び続けて巨人症となる。また、下垂体の腫瘍(しゅよう)によって性腺(せいせん)刺激ホルモンの分泌不全がおこり、骨端線の閉鎖期が遅れると、骨はさらに伸び続けて2メートル以上になるものもある。
下垂体性巨人症は、成長ホルモンを分泌する下垂体前葉の好酸性細胞の腺腫(せんしゅ)によることが多い。症状としては、幼児期にすでに標準以上の発育の徴候があり、10~15歳で著しく身長が伸びる。体の各部位は一般に均衡がとれてはいるが、胴体よりも四肢の発育がさらによいため、上半身より下半身が長くなる。発育期が過ぎると、先端巨大症の症状もみられるようになり、体の末端部が肥大する。糖の忍容力(糖排泄閾値(はいせついきち))が低く、糖尿病状態を伴うこともある。治療をせず放置すると、20歳を過ぎるころから、下垂体のほかの細胞が腫瘍のために圧迫されて分泌不全をおこし、下垂体機能低下症の症状を呈するようになり、感染症にもかかりやすく、進行性衰弱などのため、比較的若いうちに死亡することが多い。なお、血液中の成長ホルモンを測定すると異常に増加していることで診断されるが、下垂体腫瘍を確認するため頭部のMRI(磁気共鳴映像法)検査も行われる。治療は、早期に手術して腫瘍を摘出するのが理想的だが、腫瘍が大きくなって手術不可能の場合や軽症の場合には放射線療法や薬物療法が行われる。
[高野加寿恵]
平均身長を著しく超え,異常な発育をする病気。主として脳下垂体の機能の病的な亢進によって,成長ホルモン(GH)が過剰に分泌された結果によると考えられている。身長が全体の平均値より,標準偏差の3倍以上であるときに,この病気が疑われる。きわめてまれな病気で,女よりも男に多い。病因は,成長ホルモンの過剰により,成長が促進され,通常合併する性腺機能の低下のために骨端線が閉鎖せず,遅くまで成長を続けるためと考えられている。少年期には成長は異常ながら,筋肉の発達もよく,正常人よりも力が強いこともあるが,しだいに疲れやすく無気力となり,治療を行わなければ,成人するころ,脳下垂体の機能が低下し,感染症にもかかりやすくなって死亡する。巨人症の約40%には末端肥大症を合併する。治療は,末端肥大症に準じて手術,放射線療法などが行われる。
→末端肥大症
執筆者:小室 裕明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…マルファン症候群の患者などに〈蜘蛛(くも)指〉という指の長い手を見るが,指を蜘蛛の長脚にたとえた名称である。巨人症などでは手も大きく,すでに松浦静山《甲子(かつし)夜話》には手首より中指先まで約29cmある身長7尺3寸(約2m20cm)の釈迦嶽(しやかがたけ)という力士の手形の話がある。釈迦が手を自在に大きくした話は《西遊記》にあり,孫悟空がひと跳び10万8000里をいく觔斗雲(きんとうん)を駆って,いかに飛んでも釈迦の手掌から出られなかった。…
…同時に手足も大きくなり,さらに頭痛,関節痛,無月経を伴い,高血圧,糖尿病などの合併症があることが多い。脳下垂体の機能亢進はほとんどが腫瘍によるもので,成長ホルモンの過剰分泌が少年期以前の骨端線閉鎖以前に起こると巨人症になり,それ以後に起こると,末端肥大症となる。検査では,血中成長ホルモンの著しい増加と,トルコ鞍の拡大がみられる。…
※「巨人症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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