ベンゾイルヒドラジン殺虫剤(読み)べんぞいるひどらじんさっちゅうざい

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベンゾイルヒドラジン殺虫剤
べんぞいるひどらじんさっちゅうざい

殺虫剤を化学構造に基づいて区分したときの分類の一つ。ベンゾイルヒドラジン殺虫剤とは、ヒドラジンがベンゾイル化された基本構造を有し、昆虫に特有な成育過程を阻害する殺虫剤の総称である。

 おもなベンゾイルヒドラジン殺虫剤には、チョウ目(鱗翅(りんし)目)昆虫に対し高い活性を示すテブフェノジドやクロマフェノジド、甲虫目昆虫に活性を示すハロフェノジドがある。

 昆虫の脱皮と変態はステロイド骨格を有する脱皮ホルモン(エクジソン)により誘導される。昆虫はステロイド骨格を体内で合成することができないため、摂食により植物に含まれるステロイドを前胸腺(ぜんきょうせん)という内分泌器官で脱皮ホルモンに変換している。植物中には、脱皮ホルモンと類似構造をもつポナステロンAやシヤステロンなどの脱皮ホルモン活性を示す物質が存在することが知られている。脱皮ホルモンは、脱皮ホルモン受容体に結合し、昆虫の脱皮や変態を誘起する。ベンゾイルヒドラジン殺虫剤の殺虫作用は、昆虫の脱皮ホルモン受容体に競合的に結合することにより、幼虫が古い表皮を脱皮できない、あるいは、新しい表皮ができないために脱皮・成育障害を誘起することに起因する。

 哺乳(ほにゅう)動物は、脱皮ホルモンを有していないため、ベンゾイルヒドラジン殺虫剤による毒性は低いが、甲殻類は、脱皮ホルモンにより脱皮・変態が制御されているためベンゾイルヒドラジン殺虫剤の影響を受ける。

[田村廣人]

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