変態(読み)へんたい

精選版 日本国語大辞典「変態」の解説

へん‐たい【変態】

〘名〙
① 様子・かたちを変えること。また、そのかたち。
※菅家文草(900頃)二・早春内宴、侍仁寿殿、同賦春娃無気力「変態繽紛」
※海道記(1223頃)蒲原より木瀬川「彼仙女が変態は柳の腰を昔語にきき」 〔司馬相如‐子虚賦〕
② 普通の状態と違うこと。また、そのさま。
※和蘭天説(1795)「備中新見阿口村の農夫四五輩、月の変態(ヘンタイ)を見る」
③ 多細胞動物の個体発生において、胚期終了後に、成体とは異なった形態・生理・生態を有する幼体をへる場合、幼体から別の段階の幼体へ、あるいは幼体から成体へ転換する過程。
※日本昆虫学(1898)〈松村松年〉昆虫の変態「昆虫は総て時季によりて其形態を変す之を変態と云ふ」
④ 植物の葉・茎・根などが普通と違った形になること。葉が針のようになっているサボテンなど。
⑤ 正常でない性行動をすること。また、そのような傾向をもつ人。
※時間(1931)〈横光利一〉「女の持物を集めたがる少し変態の八木」

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デジタル大辞泉「変態」の解説

へん‐たい【変態】

[名](スル)
形や状態を変えること。また、その形や状態。
普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態。
「お品は身体に―を来したことを」〈長塚
《「変態性欲」の略》性的倒錯があって、性行動が普通とは変わっている状態。また、そのような傾向をもつ人。
動物で、幼生から成体になる過程で形態を変えること。おたまじゃくしがカエルに、蛹(さなぎ)がチョウになるなど。
植物で、根・茎・葉などが本来の形から変化し、著しく異なる形態をとること。葉がとげとなるなど。
同じ化学組成で物理的性質の異なる物質の状態。温度変化などによって生じることが多い。単体の場合には同素体という。転位

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百科事典マイペディア「変態」の解説

変態【へんたい】

卵から孵化(ふか)した幼生成体とは異なった形態,生理生態をもつ場合,幼生が成体になるまでの変換の過程をいう。カイメン動物をはじめ,環形,軟体などほとんどの海産無脊椎動物でみられる。陸上のものでは昆虫に著しく,(さなぎ)の時期を経る完全変態チョウ,ガなど)と幼虫から漸進的に成体になる不完全変態(バッタ,トンボなど)に分けられる。脊椎動物ではホヤウナギカエルなどが著名。変態に関するホルモン変態ホルモンと総称され,両生類ではチロキシン,昆虫では前胸腺ホルモン,アラタ体ホルモンが知られる。
→関連項目エクジソン昆虫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「変態」の解説

変態
へんたい
metamorphosis

多細胞動物の個体発生において,が直接成体にならずに,成体と異なる形態,生理,生態をもつ幼生を経て成体となる現象。ウナギ,カエル,昆虫,ウニ,ホヤなどは一般によく知られた例である。変態に際して前の組織はこわれ,新しい組織に置き換るが,この働きはホルモンによって支配されている。昆虫では幼虫から蛹を経て成体となる完全変態と,蛹の時期をもたない不完全変態があり,前胸腺ホルモンの支配を受ける。カエルでは甲状腺ホルモンが関与する。

変態
へんたい
modification

化学的組成が同じでありながら,原子配列,化学結合方式,物理的性質などが異なる状態に変る現象。同素体や結晶における原子配列の変化などは変態の例である (→同素変態 ) 。合金などにおいて,変態の際に生じる内部ひずみのため徐々に変態するものをマルテンサイト変態という。

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化学辞典 第2版「変態」の解説

変態
ヘンタイ
modification

ある固体物質と化学組成は等しいが物理的性質の異なる物質の関係をいう.結晶学では多形ともいう.また,単体の変態は同素体である.結晶構造に変化のない場合でも,電気伝導率磁化率などの物理的性質が変化する場合には変態とよぶことがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典 第2版「変態」の解説

へんたい【変態 metamorphosis】


【動物の変態】
 生物の個体発生において,幼生での分化が緩やかになるか,または停止した後にくる成体への分化の過程。卵から孵化(ふか)した個体の基本構造が,性成熟の有無を除き,成体と同一の場合を直接発生というが,変態はこの直接発生に対置される概念ともいえる。変態は原生動物を除くほぼすべての動物門で知られているが,哺乳類をはじめとする胎生および卵胎生種,直接発生をする軟骨魚類鳥類爬虫類,クラゲや群体ボヤなどでみられるような無性生殖をする動物では変態は起こらないといえる。

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