変態(読み)ヘンタイ(英語表記)metamorphosis

翻訳|metamorphosis

デジタル大辞泉 「変態」の意味・読み・例文・類語

へん‐たい【変態】

[名](スル)
形や状態を変えること。また、その形や状態。
普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態。
「お品は身体に―を来したことを」〈長塚
《「変態性欲」の略》性的倒錯があって、性行動が普通とは変わっている状態。また、そのような傾向をもつ人。
動物で、幼生から成体になる過程で形態を変えること。おたまじゃくしがカエルに、さなぎがチョウになるなど。
植物で、根・茎・葉などが本来の形から変化し、著しく異なる形態をとること。葉がとげとなるなど。
同じ化学組成で物理的性質の異なる物質の状態。温度変化などによって生じることが多い。単体の場合には同素体という。転位。
[類語](1様変わり変形変容変貌面変わり変身イメージチェンジ変異変わる/(3色好み好色すけべいすけべえ好き者漁色女好き男好き・色を好む・プレーボーイ女たらし女殺し好色家鼻下長助兵衛ったらしい/(4完全変態不完全変態・不変態

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精選版 日本国語大辞典 「変態」の意味・読み・例文・類語

へん‐たい【変態】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 様子・かたちを変えること。また、そのかたち。
    1. [初出の実例]「変態繽紛」(出典:菅家文草(900頃)二・早春内宴、侍仁寿殿、同賦春娃無気力)
    2. 「彼仙女が変態は柳の腰を昔語にきき」(出典:海道記(1223頃)蒲原より木瀬川)
    3. [その他の文献]〔司馬相如‐子虚賦〕
  3. 普通の状態と違うこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「備中新見阿口村の農夫四五輩、月の変態(ヘンタイ)を見る」(出典:和蘭天説(1795))
  4. 多細胞動物の個体発生において、胚期終了後に、成体とは異なった形態・生理・生態を有する幼体をへる場合、幼体から別の段階の幼体へ、あるいは幼体から成体へ転換する過程。
    1. [初出の実例]「昆虫は総て時季によりて其形態を変す之を変態と云ふ」(出典:日本昆虫学(1898)〈松村松年〉昆虫の変態)
  5. 植物の葉・茎・根などが普通と違った形になること。葉が針のようになっているサボテンなど。
  6. 正常でない性行動をすること。また、そのような傾向をもつ人。
    1. [初出の実例]「女の持物を集めたがる少し変態の八木」(出典:時間(1931)〈横光利一〉)
  7. てんい(転移)

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改訂新版 世界大百科事典 「変態」の意味・わかりやすい解説

変態 (へんたい)
metamorphosis

生物の個体発生において,幼生での分化が緩やかになるか,または停止した後にくる成体への分化の過程。卵から孵化(ふか)した個体の基本構造が,性成熟の有無を除き,成体と同一の場合を直接発生というが,変態はこの直接発生に対置される概念ともいえる。変態は原生動物を除くほぼすべての動物門で知られているが,哺乳類をはじめとする胎生および卵胎生種,直接発生をする軟骨魚類や鳥類,爬虫類,クラゲや群体ボヤなどでみられるような無性生殖をする動物では変態は起こらないといえる。

 変態過程を生活環に組み入れるか否かは,その種のとる繁殖戦略と密接なかかわりをもつ。この戦略は二つに大別される。一つは大卵方式で,胚は栄養蓄積の豊富な卵中で発生の全過程を終える直接発生をするか,あるいは親による保護下で胚発生あるいは後胚発生を終了する。いま一つは小卵方式で,多数の小卵を産するが,卵中の栄養物質は限られるため,産卵後すみやかに孵化し,自由生活者である幼生に移行する。このため,幼生は生命維持に必要な最小限の付属器官のみを備え,成体構造の構築はあとにまわす。このような種の孵化後の個体を幼生といい,多くの場合,幼生は成体と異なる生態的地位(生活空間,餌などが異なる)を占める。

変態はほぼすべての海産無脊椎動物でみられる。これらの成体はカイ,ゴカイなどのように底生か,フジツボ,カイメン,ホヤなどのように固着生であることが多い。このため,胚と成体の間に幼生世代をはさみ,この世代に種の分散と成体の生活空間の選択という役割を担わせている。繁殖には小卵方式をとることが多く,幼生は自由浮遊生活者である。上記の目的のために幼生は特有な運動器官と摂食器官,成体の生活空間を選択するための感覚器官などを備えるが,これらの一部は成体では消失するか新たなものに置き換えられる。このような変態はふつう漸進的に生じ,成体の器官が成長するにつれて,幼生器官は退化する。例えば,軟体動物腹足類では体軸がねじれ,肛門が口の付近まで移動するが,幼生の構造の多くが成体でも保持される。環形動物のムカシゴカイでは,トロコフォラ幼生の下部に体幹部の原基を生じ,これが後方に増節しながら伸びて,成体の匍匐(ほふく)生活へと転向する。しかし,体制をまったく変えてしまうものも少なくない。棘皮(きよくひ)動物の幼生は左右対称であるが,成体は放射相称となる。ウニではプルテウス幼生の左脇の真皮上にウニ原基が生じ,ここから成体の構造が構築され,幼生のもつほとんどの構造は捨てられる。また,ホヤのオタマジャクシ幼生の変態は劇的な例として知られる。幼生の尾部は幼生が岩などの基盤に付着後,速いものでは数分以内に吸収され,続いて脊索,神経,筋肉などほとんどの幼生器官は退化してしまう。変態はしばしば脱皮を伴い,とくに節足動物では顕著で,甲殻類では脱皮ごとに体制が変化することもある。短尾目十脚類(カニ)では,ノープリウス→プロトゾエア(孵化)→ゾエア→メタゾエア→メガロパと異なる5段階の幼生をへて幼ガニとなるが,各段階のうちでも数回の脱皮を繰り返す。このことから,各幼生段階への移行を一つの変態としてとらえることもできる。

陸生無脊椎動物の変態は昆虫で詳しく調べられてきた。無翅(むし)類を昆虫に含めるか否かはさておき,昆虫の変態は便宜的に,無変態(不変態,上変態)ametaboly,不完全変態hemimetaboly,完全変態holometabolyに大別される。

(1)無変態 無変態昆虫には無翅亜綱のトビムシ目(トビムシ),原尾目(カマアシムシ),コムシ目(コムシ),シミ目(シミ)があり,外部生殖器以外は体形に変化なく成虫となる。無翅類原尾目は各脱皮ごとに腹部環節が1節ずつ増加するため,とくに増節変態ともいう。有翅昆虫は旧翅類と新翅類に大別され,後者のうちの少新翅類だけが完全変態をし,残りはすべて不完全変態である。

(2)不完全変態 不完全変態は蛹(よう)期のないことにより特徴づけられ,孵化後,翅や外部生殖器の原基が外部に現れている形式をさすが,変態の形式は多様である。幼虫と成虫の生態学的地位は同一であることが多いが,トンボやセミなどのようにまったく異なる場合もある。不完全変態は前変態,漸変態,新変態に大別される。前変態はカゲロウ目のみで,これは亜成虫から成虫へと成体で脱皮する唯一の例である。漸変態はさらに原変態と少変態に分けられ,そのうち原変態をするものにトンボ目,カワゲラ目がある。これらの幼虫は水生で,形態は成虫と著しく異なり,陸生の成体へと移行するため変態は激しい形態変化を伴う。少変態は典型的な形式の不完全変態で,ゴキブリ目,カマキリ目など10目以上にわたってみられる。新変態は半翅目同翅亜目とアザミウマ目でみられ擬蛹を形成する。特殊な変態型が多く,タマカイガラムシ類のように翅原基が最終齢で初めて外部に現れるものを同変態,アザミウマのように不動の半若虫から翅原基が外に現れる若虫をへて成虫になるものを再変態,摂食をしない若虫の齢期が成虫の直前にあるものを副変態(カイガラムシ科の雄),無翅の終齢幼虫から成虫が羽出するものを異変態(半翅目コナジラミ類)と称する。シロアリ目シロアリ科では,変態の様相は混乱をきわめ,Kalotermesでは,孵化後,脱皮を繰り返したのち擬働きアリ(幼虫)が生じ,これが脱皮して前兵アリから兵アリになる場合と,1齢若虫から2齢若虫をへて有翅の成虫になる場合があり,さらに2齢若虫が1齢若虫,1齢若虫が擬働きアリへと脱皮後,形態的に戻ることもあり,統一する変態の名称はない。

(3)完全変態 蛹期があることで特徴づけられる完全変態は,翅肢などの成虫付属器官が成虫原基(成虫芽)の形で幼虫期の間体内にある内翅類(鱗翅目,双翅目,甲虫目など)にみられる。この型の変態をする種のほとんどで,幼虫と成虫との生態的地位は異なる。また,幼虫から成虫への形態変化は劇的で,幼虫内部組織・器官の多くが消化され,新たに成虫のそれが形成される。幼虫にはシミ型(三爪(さんそう)幼虫を含む),芋虫型(多肢型),うじ虫型(無肢型)があるが,各幼虫期ごとに異なった型をとる種もかなりある。多変態をするシデムシでは1齢はシミ型,2~3齢は芋虫型である。ツチハンミョウでは1齢はシミ型,2~3齢は芋虫型,4齢は不動の囲蛹(3齢幼虫の皮膚が囲蛹殻となる),5齢でまた芋虫型となりさなぎをへて成虫となる。寄生性の膜翅目とネジレバネ目は過変態昆虫で,ネジレバネ類は1齢の三爪幼虫が寄主のスズメバチにとりつき,体内へ侵入したのち,うじ虫型のうじとなるし,ヤセバチ類では1齢はシミ型,2齢は芋虫型,3齢はうじ虫型幼虫となる。

脊椎動物の尾索類(ホヤ,オタマボヤ,ウミタル)の有性生殖個体や頭索類(ナメクジウオ)で変態がみられる。脊椎動物では円口類(ヤツメウナギ),硬骨魚類(ウナギ,サバ,カレイなど),両生類に顕著な変態がみられるが,いずれも漸進的変化である。ウナギでは白色半透明のゼリー状の葉形幼生(レプトセファラス)から小型のシラスと呼ばれる稚魚期へ,ヤツメウナギではアンモシーテス幼生が孵化後数年たったのち数ヵ月で成体へと変態する。海産脊椎動物で顕著なのは,ヒラメやカレイで,両側にあった目は前頭部をまわって一側となり,無眼側の体色は白色となってしまう。ただし,有眼側が体の左右いずれにくるかは,種によって決まっているわけではない。

 両生類無尾類(カエル)の幼生はオタマジャクシと呼ばれ,変態時には尾の吸収,四肢の出現,エラの退化と肺の形成,口器の変更,目の位置の移動などと体制は大幅に変化する。これらの変化に伴い,窒素代謝物の排出はアンモニアから尿素へと,ヘモグロビンは酸素親和性の高いものから低いものへと変化するように,生理的にも水中から陸上へ適応する移行がみられる。このような移行も変態を間にはさむことにより解決されている。

 両生類の変態には二次的変態がある。イモリの1種の成体は,繁殖期になると一時的に水中生活に適応するようになり(water-drive),これはプロラクチン分泌によるとされている。ブチイモリ属のイモリは,水生の幼生は外部のえらと扁平な尾を備え,体色は緑であるが,第1次変態でオレンジ色の粗い皮膚の陸生イモリとなり,森林の林床にすむようになる。数年後,第2次変態を起こし,滑らかな皮膚をもつ水生の生活へと戻るが,尾には骨があり,外部のえらはない。同時に生理的変化も生じる。視物質は陸生特有のロドプシンrhodopsinから水生特有のポルフィロプシンporphyropsinへと変化し,窒素排出も尿素からアンモニアへと変化する。これらすべての変化はプロラクチン様物質でひき起こされる。

変態過程の引金は少数の例を除いてよく解明されていない。昆虫では,幼若ホルモンが減少あるいは消失したとき脱皮ホルモンエクジソン)が作用すると変態が始まる。また両生類では腺下垂体(下垂体前葉)から分泌されるプロラクチンが減少し,同じく前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモンが増加し,次いで甲状腺ホルモンが増加すると,変態が起きるとされている。
執筆者:

植物に変態という語を初めて用いたのはJ.W.vonゲーテで,彼は植物体のすべての部分は茎や葉から変形してきたものであると考えた。維管束植物の体制は,茎を基本とし,根と葉が茎から分化してきたものであることが明らかにされているが,そのように分化した基本的な器官である根,茎,葉が,普通の様態からはなはだしく変形したものになることを,現在では,変態という。根は通常植物体の支持と吸水の機能をもっているが,サツマイモの貯蔵根,ヒルギやアコウなどの気根や呼吸根,クモランの同化根などのほか,カワゴケソウの仲間のように根が植物体の基本となる場合もあり,根の変態の例とされる。葉からの変形としては,サルトリイバラの巻きひげ,サンショウモの沈水葉,タヌキモの捕虫葉,メギの葉針などが,また,茎からの変形には,カラタチのとげ,ジャガイモの貯蔵茎,サボテンの扁平になった葉のような茎,アリ植物にみられるアリの住居となる茎,ヒルガオのつる茎などがよく知られた例である。

 変態は植物の形態が種によって定まっている変形であるが,種の属性をふみ外した変形もしばしばみられ,このような異常形は奇形malformationと呼ばれる。これは個体発生の異常などによって出現するもので,その性質が子孫に伝わることはない。

 植物の種の進化はいろいろの表現形質が変形することによって認められるものであるが,その変形のうち,特定の形質が異常に変形してしまったものが変態であるといえる。ゲーテは植物の形態を一つの原型からの変態で説明しようとしたが,陸上植物の進化についてみると,根や葉は茎の変形として分化してきたものであり,花は胞子葉を中心とした苗条の変形したものであることが確かめられてきているので,ゲーテの思弁的な形態の解釈は,現代的な実証によってあらためて確認されているといえる。
執筆者:



変態(物理) (へんたい)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変態」の意味・わかりやすい解説

変態(生物学)
へんたい
metamorphosis

生物学用語で、動物および植物において用いられる。

動物における変態

動物においては、個体発生中、胚(はい)発生を終了(孵化(ふか))してから成体に達するまでのある時期にみられる、形態や体の構造上の著しい変化を変態という。通常、変態とともに生活様式を著しく変化させるものが多い。胚発生は終えたものの、成体とは異なる形をもち、独立した生活を営むが生殖能力をもたない動物を幼生(昆虫では幼虫、若虫)とよぶ。この幼生が成体、あるいは次の段階の幼生へと変化する際に変態がおこる。哺乳(ほにゅう)類、鳥類、爬虫(はちゅう)類、魚類など以外の動物にみられる。

[竹内重夫]

海産の無脊椎動物

海産無脊椎動物のなかには、1回以上の変態を示すものもあり、各類の動物の生活史が、特有の形態をもつ幼生により特徴づけられるものがとくに多い。腔腸(こうちょう)動物のミズクラゲ類ではプラヌラ→ポリプ→ストロビラ→エフィラ→成体、扁形(へんけい)動物ではミュラー幼生→成体、紐形(ひもがた)動物ではピリディウム幼生→成体、輪形動物や環形動物ではトロコフォラ幼生→成体、軟体動物ではトロコフォラ幼生→ベリジャー幼生→成体、といった変態をする。棘皮(きょくひ)動物の幼生は多様で、ウニの類はプルテウスから、クモヒトデの類はオフィオプルテウスから、ヒトデの類はビピンナリアから、ナマコの類はアウリクラリアから、それぞれ成体へと変態する。節足動物のうち、海産の甲殻類はノープリウス→ゾエア→メガロッパ→成体へと変態するのが基本型となっているが、淡水産の甲殻類はこの過程を卵の中で済ませて孵化するので、変態のみられないものが多い。

[竹内重夫]

陸生の無脊椎動物

昆虫では、成虫原基が体の中に完全に隠されていて、幼虫→蛹(さなぎ)→成虫という過程を経て、いわゆる完全変態をするものと、成虫原基が外に現れて、幼虫の間に徐々に成長し、最後の脱皮で幼虫→成虫と変態する不完全変態をするものとがある。前者はチョウ、ガ、ハエなど、昆虫のなかでは進化したものにみられ、後者はトンボ、バッタ、ゴキブリなど原始的な昆虫にみられる。

[竹内重夫]

原索動物

ホヤは、オタマジャクシ型の幼生から固着生活をする成体へと変態する。このホヤの類のネオテニー(幼形成熟、幼態成熟)から脊椎動物が分離してきたとする考え方がある。

[竹内重夫]

脊椎動物

脊椎動物では、もっとも原始的な円口類のアンモセーテス幼生からの変態と、両生類の変態がある。カエルの幼生であるオタマジャクシは、尾を振って泳ぎ、えら呼吸し、魚に似た側線があって完全に水中での生活に適応しているが、四肢の形成と尾の消失、えら呼吸から肺呼吸への転換など、陸上生活に適応するような変態を遂げる。

[竹内重夫]

変態とホルモン

このようないろいろな動物の変態のうちで、昆虫類と両生類の変態については研究が進んでおり、変態にホルモンが大きな役割を果たしていることが知られている。昆虫では前胸腺(せん)から分泌されるエクジソンのみが働くと成虫芽は急速に分化し、成虫の器官へと成熟し、脱皮とともに成虫が出現する。この際細胞内で利用される遺伝情報が、幼虫型から成虫型へと切り換えられることが知られている。両生類では甲状腺ホルモンが主役を演じている。幼生の甲状腺が十分発達してくると、下垂体から甲状腺刺激ホルモンが分泌され、その作用の下で甲状腺が甲状腺ホルモンを分泌する。甲状腺ホルモンは尾の組織を壊し、肢(あし)を発達させるなどして変態を促す。

 なお、以上みてきたような変態を伴う個体発生を間接発生とよぶのに対し、変態を伴わない個体発生は直接発生とよぶ。また、孵化後成体に至るまでの幼生(幼虫)の発生を後胚発生、あるいは後胚期発生という。

[竹内重夫]

植物における変態

植物学では、器官が本来と著しく異なる形となり、そのことが種によって一定しているとき、その現象を変態とよぶ。形態の変化に伴って、機能も本来とは異なったものとなる。このように、植物学でいう変態とは器官学上の用語であるため、主として維管束植物に限って用いられる。変態には、多くの種に共通してみられる普遍的変態と、特定の種にみられる特殊変態とがある。前者の例には、芽を覆う鱗片(りんぺん)葉や、花を構成する花葉(かよう)(どちらも葉の変態)があり、後者の例には、巻きひげ、刺(とげ)、葉状茎、塊根などがある。

[福田泰二]



変態(金属)
へんたい
transformation

氷を温めると水になる。水を加熱するか、または、密閉容器に入れて減圧すると水蒸気になる。このように、温度や圧力の変化に伴って物質の状態が変化する現象を変態という。

 純金属の変態のなかでもっともよく知られているのは純鉄の変態であって、体心立方晶のα(アルファ)鉄は910℃で面心立方晶のγ(ガンマ)鉄に変態する。このγ鉄をさらに加熱すると、1400℃で体心立方晶のδ(デルタ)鉄に変態する。また、α鉄を超高圧容器に入れて常温で加圧すると、約13万気圧で変態して、最密六方晶のε(イプシロン)鉄になる。純鉄以外にも、約20種類の金属が加熱・冷却、あるいは加圧によって変態することが知られている。

 合金の変態には各種の様式のものがあるが、大別して2種類に分類される。一つは拡散型変態とよばれるもので、各原子が個々に移動して、別種の結晶を構築し、これが成長するにつれて元の結晶が消滅していく。鋼のパーライト変態は炭素原子の拡散によって進行する代表的な拡散型変態である。もう一つは無拡散型変態またはマルテンサイト変態とよばれるもので、原子の集団の連携移動によって別種の構造の結晶に生まれ変わる。近年、形状記憶性を示す材料として注目されたニチノール合金は、無拡散型変態の特徴を利用したものである。なお、磁気変態はキュリー温度を境界として磁気特性が変わる現象であり、結晶構造は変化しない。

[西沢泰二]


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百科事典マイペディア 「変態」の意味・わかりやすい解説

変態【へんたい】

卵から孵化(ふか)した幼生が成体とは異なった形態,生理,生態をもつ場合,幼生が成体になるまでの変換の過程をいう。カイメン動物をはじめ,環形,軟体などほとんどの海産無脊椎動物でみられる。陸上のものでは昆虫に著しく,(さなぎ)の時期を経る完全変態(チョウ,ガなど)と幼虫から漸進的に成体になる不完全変態(バッタ,トンボなど)に分けられる。脊椎動物ではホヤ,ウナギ,カエルなどが著名。変態に関するホルモンは変態ホルモンと総称され,両生類ではチロキシン,昆虫では前胸腺ホルモン,アラタ体ホルモンが知られる。
→関連項目エクジソン昆虫

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普及版 字通 「変態」の読み・字形・画数・意味

【変態】へんたい

異なる様態。〔楚辞、九章、思美人〕吾(われ)且(しばら)く(せんくわい)して、憂ひを(たの)しましめんとす 南人(苗族など)の變態を

字通「変」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変態」の意味・わかりやすい解説

変態
へんたい
metamorphosis

多細胞動物の個体発生において,胚が直接成体にならずに,成体と異なる形態,生理,生態をもつ幼生を経て成体となる現象。ウナギ,カエル,昆虫,ウニ,ホヤなどは一般によく知られた例である。変態に際して前の組織はこわれ,新しい組織に置き換るが,この働きはホルモンによって支配されている。昆虫では幼虫から蛹を経て成体となる完全変態と,蛹の時期をもたない不完全変態があり,前胸腺ホルモンの支配を受ける。カエルでは甲状腺ホルモンが関与する。

変態
へんたい
modification

化学的組成が同じでありながら,原子配列,化学結合の方式,物理的性質などが異なる状態に変る現象。同素体や結晶における原子配列の変化などは変態の例である (→同素変態 ) 。合金などにおいて,変態の際に生じる内部ひずみのため徐々に変態するものをマルテンサイト変態という。

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化学辞典 第2版 「変態」の解説

変態
ヘンタイ
modification

ある固体物質と化学組成は等しいが物理的性質の異なる物質の関係をいう.結晶学では多形ともいう.また,単体の変態は同素体である.結晶構造に変化のない場合でも,電気伝導率や磁化率などの物理的性質が変化する場合には変態とよぶことがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「変態」の解説

変態

 生物が内因性の原因によって外形を含めて大きく不可逆的に形態を変化させること.蛹が蝶になるなど.

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