改訂新版 世界大百科事典 「ホウショウ」の意味・わかりやすい解説
ホウショウ (芳樟)
Cinnamomum camphora Presl var.nominale Hayatasubvar.hosyo Hatusima
クスノキ科の高木。クスノキの亜変種で,中国南部から台湾南東部に分布する。クスノキに比べて花も果実も小ぶりで,葉縁が波打つ点で異なる。また基本種のクスノキは,植物体にショウノウ(樟脳)を含むが,ホウショウではショウノウはほとんど含まず,その代りリナロールをクスノキの1.5倍含有する。枝葉を水蒸気蒸留すると約1%の精油が得られるが,この精油の中の30~70%がリナロールである。精油は品のよい香りで,高級な香料に使われる。第2次大戦前は台湾で年間300~400tの精油が生産されていた。しかし,ショウノウ含量が低いため,ショウノウの原料のクスノキに混入するとショウノウ収量を下げることから,ショウノウ生産の場では臭樟(しゆうしよう)と呼んで敬遠されていた。戦後,日本各地で栽培が試みられたが,薩摩半島南部の鹿児島県開聞町で現在栽培が行われ,香料原料とされている。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報