(読み)タナ

デジタル大辞泉 「棚」の意味・読み・例文・類語

たな【棚】

物をのせておくために板を横に渡したもの。「をつる」「本
植物のつるを広くはわせるため、木や竹を組んで高い所にかけ渡したもの。「藤
岩壁で、人が立てるほどの段になっている所。
魚の遊泳層。また、魚が餌を食う深さのこと。「浮きを調節してを取る」
大陸棚、または陸棚
和船船体左右の外板。→船棚
薪炭木材などを積んだ空間の体積を測る単位。1棚は、長さ3尺、高さ・幅とも6尺、すなわち、108立方尺(3.00526立方メートル)、または、長さ2尺・幅10尺・高さ5尺、すなわち、100立方尺の体積。
[下接語](だな)閼伽あか網棚岩棚恵方えほう縁起棚かいこ飾り棚神棚荒神棚精霊しょうりょう書棚・食器棚・大陸棚たま違い棚茶棚ちゅう釣り棚とこ床脇とこわき歳徳としとく戸棚袋棚ふじ葡萄ぶどうふなふみ本棚盆棚見世みせ陸棚
[類語]釣り棚飾り棚神棚網棚違い棚陳列棚藤棚水屋ショーケース

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精選版 日本国語大辞典 「棚」の意味・読み・例文・類語

たな【棚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物を載せるために、板などを水平にわたし、取り付けたもの。
    1. (イ) 祭壇の前に設け、祭器や食器などを置く台。また、屋内に取り付けた、神をまつるつり棚。
      1. [初出の実例]「水の屋の中に別に架(タナ)を作りて」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. (ロ) 物を載せるため、植物のつるを這わせるため、または装飾として、板、竹などを渡したもの。壁面に作り付けの化粧棚などの類と、移動できる家具としての棚厨子(ずし)などの類がある。また、前面に戸をはめた類は戸棚という。〔十巻本和名抄(934頃)〕
      1. [初出の実例]「『宜陽殿(ぎやうでん)の一のたなに』という言ぐさは」(出典:枕草子(10C終)九三)
  3. ( 「枻」とも ) 和船の船側板の総称。近世の大型船では、船底より根棚、中棚、上棚の三階造りを通例とし、小船では根棚(この場合特に「かじき」という)と上棚の二階造りとする。上棚・中棚とも幅広く長い材のため数枚の板をはぎ合わせ一枚の板に造る。ふなだな。棚板。
    1. [初出の実例]「船にことごとなるたなといふ物をかしく造りて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)殿上の花見)
  4. 和風建築の部材名。棟木(むなぎ)と平行して、垂木(たるき)を受けるためにかけ渡す長い角材。また、軒の柱の頂上に渡し小屋梁(こやばり)・垂木を受ける木材をいう。桁(けた)。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
  5. たなしり(棚尻)」の略。
    1. [初出の実例]「提帯はふうのうまみを棚へ上げ」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻八下)
  6. 長さ三尺(約九〇センチメートル)の木炭・薪を六尺の高さと幅に積みあげたもの。また、その量の単位。
  7. 水中において魚が餌(えさ)をとらえる層のこと。「たなをさぐる」
  8. 山の岩場で、棚状になっている部分。
  9. 全体の地形が階段状をなす中で、ゆるい傾斜の部分。流水があると瀑となる谷筋や山の斜面。
  10. 陸棚(りくだな)、または大陸棚(たいりくだな)のこと。
  11. 刺網類で、浮子のついた網、または沈子のついた網をいう。

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普及版 字通 「棚」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

(旧字)
12画

[字音] ホウ(ハウ)
[字訓] たな・さじき・ひさし

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(朋)(ほう)。に相連するものの意がある。〔説文〕六上に「棧(さん)なり」とあり、また閣・閣(きかく)ともいう。〔倉頡〕に「樓閣なり」とあるのはいわゆる複道、屋根のある廊下のことである。

[訓義]
1. たな、おおいだな。
2. さじき、かけはし、ひさし。
3. 小屋。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 太奈(たな) 〔名義抄 タナ・ヤナグヒ 〔字鏡集〕 ヤナグヒ・タナ・ヤカタ

[語系]
bengは同声。(ほう)は〔説文〕十四上に「兵車なり」とあり、重装備の戦車。車上に望櫓があるので、また楼車ともいう。

[熟語]
棚閣・棚規・棚圏・棚桟・棚車・棚・棚場・棚頭・棚寮
[下接語]
危棚・妓棚・高棚・茶棚・綵棚・山棚・酒棚・舟棚・秋棚・書棚・水棚・竹棚・帳棚・店棚・涼棚・露棚・楼棚

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「棚」の意味・わかりやすい解説


たな

横に平らに渡した板で、物をのせるもの。「たな」は大和(やまと)ことばで、「たな」の「た」は手の古形、「な」は連体助詞であり、「たなびく」とか「たな雲」と同根の、水平の状態を表す。棚には建物に造り付けのものと独立した置き棚とがあり、それぞれに実用本位のものと装飾的なものとがある。造り付け棚には吊(つり)棚と仕込み棚と戸棚、および違い棚がある。吊棚は高棚ともいい、古くからあり、平安時代の『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』にも出ている。何段かの棚を造り付けにした仕込み棚も鎌倉時代には使われている。これに引違い戸をつけたのが戸棚で、これは江戸時代に多くなる。いずれも実用的なもので、台所で食器や食品を入れる膳棚(ぜんだな)として、あるいは部屋で雑多な物を入れる部屋戸棚として用いられる。違い棚は床の間や書院の脇(わき)に設けられる飾り棚で、座敷の室内装飾として重要なものであるため、柱や棚板などは銘木を使って美しくつくられる。修学院(しゅがくいん)離宮の霞棚(かすみだな)、桂(かつら)離宮の桂棚、三宝院の醍醐(だいご)棚は天下の三棚といわれて有名である。置き棚も古くからあり、正倉院には奈良時代の棚が2基残っている。1基は間口約180センチメートル、高さ150センチメートルで、両側に側板を立て、3段の棚板を渡してあり、1基は間口約260センチメートル、高さ140センチメートルで、4柱のほか中央の前後にも柱を立て3段の棚板を渡してある。どちらも素木(しらき)造りで実用本位の、棚の基本形のようなものであるが、この型の棚はその後も台所用の膳棚、部屋棚、また倉棚として基本的にはそのままの形で中世、近世、近代へと引き継がれているが、近世になるとこれに引違い戸がつく戸棚となる。さらに引出しなどもつけられ、より便利なものとなって現代に及んでいる。

 一方、装飾的な置き棚は奈良時代に大陸から渡来した厨子(ずし)を原型とする。厨子は両開き扉の中に棚がつくもので、銘木などを使い、飾り金具をつけた美しい造りで、文房具や書物などを入れて室内装飾として用いられた。平安時代になると、これに棚を加えた厨子棚が創案されるが、これが日本の貴族調度の典型とされ、以後の装置的置き棚はすべてなんらかの形で厨子棚の影響を受けることとなった。厨子棚には上が棚で下が厨子の二階厨子と、棚だけの二階棚、三階棚がある。二階厨子のほうが格が高く、寝殿造では母屋(もや)に置かれ、二階棚、三階棚は庇(ひさし)に置かれた。いずれも蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)などの華麗な造りで、手箱や香壺(こうつぼ)箱などを飾り、かならず2基並べて据えられた。これを武家が受け継ぎ、江戸時代に整備されたのが大名の調度の厨子棚、黒棚、書棚の三棚であるが、中に収める物を含め、すべてが統一された意匠のもとに豪華な高蒔絵などでつくられた。そのほか、茶人らが創案した棚もある。これは素木造りとか竹やよしずなどを使った簡素なものである。これらを混合したのが現在でも使われている座敷用の飾り棚で、これは近世以降に一般民衆も棚を飾るようになって生まれたものである。

小泉和子


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改訂新版 世界大百科事典 「棚」の意味・わかりやすい解説

棚 (たな)

物を置くための棚には置棚と作り付け棚とがある。古代の棚は《古事記》や《令義解》《延喜式》などに棚案(たなつくえ),高棚,倉棚などが記される。棚案は長さ3尺,広さ1尺3寸,高さ2尺5寸ほどの机形の棚,高棚は釣棚,倉棚は倉庫の中に設けられる棚である。この系統の実用的な棚としては奈良時代のものが正倉院に2基残っており,かなり大型で塗装もなく,いたって簡素なつくりである。こうした実用本位の棚はそのまま台所用や雑物棚として中世から近世,近代へとほとんど変わらずにつづいていくが,近世になるとこれに遣戸(やりど)(引違い戸)がついて戸棚になる。また奈良~平安時代にかけて装飾的な置棚が使われだした。最初は大陸からもたらされた厨子(ずし)が貴族の調度として使われていたが,これは日本人にはなじまず,平安時代になると厨子と棚とをいっしょにした厨子棚が工夫された。これには棚だけの二階棚,三階棚もあり,蒔絵(まきえ)などで美しく装飾され,寝殿造建築における貴族調度の典型となった。この系統の棚も中世,近世に室内装飾の中心として受けつがれ,近世の三棚や冠棚となる。三棚は大名家の嫁入調度で,厨子棚,黒棚,書棚から成る。厨子棚には化粧道具,香道具,文房具が納められ,黒棚には歯黒道具,書棚は別の部屋に飾られるが,書籍,文房具を納めた。三棚では幸阿弥長重作《初音蒔絵三棚》(徳川黎明会)が有名である。冠棚は冠を置く棚であるが,後に香炉台にも用いられた。さらに茶の湯の隆盛にともなって,茶道具を置く棚も各種のものがつくられた。

 置棚とは別に,書院造建築には作り付けの棚がつくられた。この棚の大きさは間口が間半,1間のものが多く,構成は棚板だけのもの,袋棚や厨子棚を組み合わせたものなど種々ある。違棚は複数の棚板を左右から上と下にくい違いに釣った棚で,香炉,食籠,花瓶,茶器などを飾る。袋棚は床の間や棚の上方または下方に設けられる小戸棚で,引違いの戸襖が付く。上方を天袋(てんぶくろ)といい,下方を地袋というが,違棚や袋棚は床の間,付書院とならんで和風住宅の室内装飾として最も重要なものとなった。違棚では修学院離宮の霞棚,桂離宮の桂棚,三宝院の醍醐棚が名高く〈天下の三棚〉と呼ばれる。

 このほか特殊な棚に,宗教用の閼伽棚(あかだな)がある。閼伽とは仏に供える水で,これを入れた桶を置くためのものであり,仏間近くの縁ぎわに設け,棚は簀の子になっている。仏教が人々の生活に浸透していった平安後期ころから,僧房や貴族邸に設けられるようになったが,後には寺院だけになった。
執筆者:


棚/店 (たな)

〈みせだな〉の略で商品を陳列してならべた台,さらに転じて陳列した店(みせ)をいう。すでに《宇津保物語》に,〈空車(むなぐるま)に魚・塩積みてもてきたり,預どもよみとりて,たなに据ゑて売る〉とあり,また四天王寺の扇面古写経では,店頭に棚をおき,柿を置いて売っている。以上のように平安期に商品を売る棚として見られるが,鎌倉期には,これがの営業権として使われるようになった。京都の四条町には,切革座の棚があり,その家屋とともに座権利が売買されている。室町・戦国期にも,狂言《鍋八撥》に新市の〈一の店(たな)に着いた者を末代まで仰せ付けらりょう〉とあるように,店には市座の営業権が付随していた場合が多い。
(みせ)
執筆者: 室町末期から江戸初期になると,家屋の街路に面した〈みせ〉部分そのものを開放して,客を中に入れる店舗形態が主流となり,《洛中洛外図》には店内の畳の上に商品を並べているようすがみられる。こうして,江戸時代に入ると〈たな〉は表通りに店舗を出す商店の意味でも使われるようになった。出入りの商人・職人が〈おたな〉と呼ぶのはこれである。またさらに〈たな〉は商売とは直接関係のない,たんなる住居そのものをも意味するようになる。表通りには面さない裏側に地主が建てた借家を裏店(うらだな)といい,これには零細なものが多かった。この場合借家人が店借(たながり),店子(たなこ)であり,店借の払う家賃が店賃(たなちん),店借の身元保証人が店請人(たなうけにん)である。この店借は家屋敷を所有する町人に対して,町人としての身分を持たない身分呼称でもあった。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「棚」の意味・わかりやすい解説


たな

板を平らに掛け渡して,物を載せるところ。持運びのできる組立て式の置棚と室内に定置された作りつけ棚とがある。前者には,古くは書棚,厨子棚などがあり,今日の壁面ユニット家具はその発展したものである。後者は,書院造の床の間に作りつけにされた違い棚がその代表といえる。また前者の意味が発展して平安時代以降,商品を売る場所をさした。鎌倉時代には「見世棚」の語が散見され,室町時代になって「店」の語が用いられるようになった。江戸時代には店の字が一般化し,大きい店舗は「たな」,小さい店舗は「みせ」と称することもあった。さらに店は,店舗はもちろん,借家をも称する語となった。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「棚」の解説

たな【棚】

板などを水平に渡して、物をのせられるようにしたもの。壁などに取り付けるものと、独立した家具として置くものがある。また戸がついたものは戸棚という。

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ダイビング用語集 「棚」の解説

岩場などの、水面に近い平らになっている部分。最低でも人が泳ぎまわれる程度以上の広さを持つものを言う。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

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