日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホトトランジスタ」の意味・わかりやすい解説
ホトトランジスタ
ほととらんじすた
phototransistor
光信号を電気信号に変換することを目的としたトランジスタ。光トランジスタともいう。ガラスレンズや窓付きの金属ケースに封入したもの、透明樹脂を用いたモールド形のもの、セラミックスケースに封入したものがある。トランジスタのベースとコレクタ間のpn接合に光を照射すると、電子と正孔が発生し、電界に従って移動し、光電流を発生する。この光電流を直接トランジスタ作用により増幅するのがホトトランジスタで、とくに受光面を広くつくってある。1950年にアメリカのシーブJ. N. Shiveによって発明された。
ホトトランジスタは普通のトランジスタ同様3端子で使うものと、ベース電極を取り除いた外見上は2端子のものがあるが、両者とも動作はあまり変わらない。ホトトランジスタの光の波長特性は半導体の禁制帯幅で決まるので、上限はゲルマニウムでは0.7エレクトロンボルト(eV)に相応する1.5マイクロメートル、シリコンでは1.1eVに相応する0.97マイクロメートルとなる。この付近に最高感度が得られるが、これ以上になると感度は急速に低下する。これより短い波長では光のエネルギーは十分大きくなるが、半導体表面での光の吸収が大きくなり感度が下がる。光電流は照度に比例して増大するが、入射光が大きすぎると発熱の影響により増加率は下がる。ホトトランジスタは感度はよいが、入出力間の直線性が劣るために光スイッチング素子として利用される。外光の検出のほか、発光ダイオードと組み合わせてホトカプラー、ホトインタラプターphotointerrupter(光断続器)として利用することが多い。
ホトトランジスタと似たものに半導体のpnpn接合を用いたホトサイリスタphotothyristorがある。これは光による大電流制御に用いられるが、いったん動作すると電圧と電流をゼロにしない限り元に戻らない欠点がある。
[岩田倫典]