ホプキンズ(Gerard Manley Hopkins)(読み)ほぷきんず(英語表記)Gerard Manley Hopkins

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ホプキンズ(Gerard Manley Hopkins)
ほぷきんず
Gerard Manley Hopkins
(1844―1889)

イギリスの詩人エセックスストラトフォード生まれ。オックスフォード大学在学中にオックスフォード運動の洗礼を受け、1866年カトリックに改宗。2年後にイエズス会に入る。それまでにすでにキーツ風の作品でみずみずしい詩才を表していたが、信仰生活のため筆を絶った。7年後、宗派の指導者の勧めで、カトリック尼僧たちの殉難を悼んだ長詩『ドイッチランド号の難破』(1875)を書き、特異な詩風を確立。その韻律形式はスプラング・リズムとよばれ、通常四つまでの弱音節に伴われた強勢が単位となって、リズムをつくっていく。古代英詩の基本的性格に先祖返りした作詩法であるが、口語英語の基本性格にも近い。その後も彼は白熱した信仰的献身恍惚(こうこつ)と苦悩に、そしてその献身を通して把握される自然の事物の特性(彼はこれをインスケープinscapeとよぶ)に、身震いするほどの詩的表現を与え続けた。作品は死後、生前の友人R・S・ブリッジズの手に残ったが、あまりにも斬新(ざんしん)な詩風のため刊行は遅らされた。1918年、ようやく英詩の風土に新しい精神がみなぎり始めた時点で『ホプキンズ詩集』として発表され、ダンおよび形而上(けいじじょう)派詩の復活と相まって、20世紀英詩の風土を決定した。

川崎寿彦

『安田章一郎著『G・M・ホプキンズ研究』(1983・清水弘文堂)』『安田章一郎編『ホプキンズのこころ』(1979・山口書店)』

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