改訂新版 世界大百科事典 「ホプキンズ」の意味・わかりやすい解説
ホプキンズ
Gerard Manley Hopkins
生没年:1844-89
イギリスの詩人。オックスフォード大学在学中,W.ペーターの唯美主義とM.アーノルドの人文主義にともにひかれながらも,強い宗教的情熱ゆえに,E.B.ピュージーの〈高教会運動〉を経てJ.H.ニューマンの影響のもとカトリックに改宗するに至った。1868年にはイエズス会に加わり,信仰への献身のため,10代のころから書き続けていた詩のすべてを焼き捨てた(実は少数の詩編は免れた)。75年にテムズ河口で起きた海難で5人の修道女が溺死したが,これをきっかけに傑作《ドイッチュラント号の難破》(1876執筆)を書き上げて以来,詩作を再開,ダブリン大学の古典語教授として没するまでに,数十編の詩を書き残した。友人R.ブリッジズの編纂による詩集の死後出版(1918)は,おそらく19世紀後半の最も重要な詩人の発見をもたらした事件であった。古英詩の詩法に似た韻律法である〈スプラング・リズムsprung rhythm〉,対位法や造語を駆使した特異な語法,〈インスケープinscape〉と彼が名づけた凝縮されたイメージの創造など,ホプキンズの詩は20世紀詩人の模倣を誘うほどの詩的実験に満ちている。だが,それらの詩法は,彼においては,被造物世界の美的経験と,神の栄光と神秘への宗教的参入を合致させようとする内的苦闘と不可分であった。〈マグソタカ〉〈フェリックス・ランダル〉〈春と秋〉など難解な傑作を含む詩集は,彼を17世紀のG.ハーバートに匹敵する偉大な宗教詩人たらしめている。1930年代に公刊された書簡集と日記も,すぐれた精神の軌跡を示す記録である。
執筆者:高橋 康也
ホプキンズ
Frederick Gowland Hopkins
生没年:1861-1947
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報