ホルマント(読み)ほるまんと(英語表記)formant

翻訳|formant

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホルマント
ほるまんと
formant

音声音響学用語。音声波形のスペクトル(波形をその周波数成分に分解し、周波数軸に沿ってその強弱を示す表示)には通常、エネルギーが集中して分布している周波数帯域が5キロヘルツまでの間に4ないし5か所存在する。現象的にはこの帯域のことをホルマント、その中心の周波数をホルマント周波数という。たとえば、男声の日本語五母音の3キロヘルツまでのスペクトルを見た場合、それぞれのスペクトル包絡の複数のピークをホルマントという。また、そのピークの周波数を低いほうから順次第1、第2、第3ホルマント周波数といい、F1、F2、F3と略記する。日本語五母音のホルマント周波数の存在範囲は以下に示す通りである。
(単位はキロヘルツ)
〔F1〕 男     女
 イ 0.16~0.3  0.2~0.35
 エ 0.3 ~0.6  0.4~0.75
 ア 0.6 ~0.9  0.7~1.2
 オ 0.4 ~0.65 0.5~0.8
 ウ 0.2 ~0.5  0.2~0.5
〔F2〕 男     女
 イ 1.9 ~2.4  2.5~3.1
 エ 1.7 ~2.2  1.9~2.5
 ア 1.0 ~1.6  1.2~1.9
 オ 0.65~1.3  0.9~1.6
 ウ 1.1 ~1.8  1.2~2.1
〔F3〕 男     女
 イ 2.5 ~3.2  3.3~4.0
 エ 2.3 ~3.1  2.6~3.5
 ア 2.2 ~3.0  2.5~3.3
 オ 2.2 ~3.0  2.4~3.3
 ウ 2.0 ~2.8  2.4~3.1
 音声音響学からいえば、ホルマントはその音を発生するときの口の形(調音)によって決まる口腔(こうくう)の共鳴によるものであり、その共鳴周波数をホルマント周波数、その共鳴の鋭さを示す半値周波数幅をホルマント帯域幅と定義する。ホルマントの構造がその音の音韻的な特徴を決定するもっとも重要な要素である。ホルマント周波数を正確に決定することは従来むずかしいとされてきたが、近時、線形予測分析と原理的には同じであるスペクトルの最尤(さいゆう)推定手法が確立され、自動的かつ定量的にホルマント周波数を決定する道が開かれた。[中田和男]
『中田和男著『音声の合成と認識』(1980・総合電子)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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