マクベイン(読み)まくべいん(英語表記)Ed McBain

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

マクベイン
まくべいん
Ed McBain
(1926―2005)

アメリカの推理作家。1956年に87分署シリーズ第一作『警官嫌い』を発表し、警察の捜査方法を忠実に取り入れた「警察小説」の代表的作家となる。以後、2002年までに52作を執筆。ニューヨークを下敷きにした架空都市アイソラを舞台に、複数の刑事たちを主人公とし、いくつかの事件が平行して進行、登場人物たちのおもしろさ、豊富なエピソード、人間味、ユーモア、巧みなストーリー・テリングが魅力で、半世紀にわたって執筆された長大シリーズでありながら、一作ごとにつねに高い評価を得た。シリーズ中の『キングの身代金』は黒澤明監督によって『天国と地獄』(1963)の題で映画化された。またフロリダの弁護士マシュー・ホープが主人公の童話・童謡題名シリーズを1978年から1998年までに13作発表。ほかにも多くの単発作品がある。
 本名のエバン・ハンターEvan Hunterの名では普通小説を書き、青少年の不良化と教育崩壊を描いた『暴力教室』(1954)は衝撃的な現場報告として話題をよび、映画にもなった。
 映画化、テレビドラマ化された作品も多数あり、『逢うときはいつも他人』『警官(さつ)』(映画邦題『複数犯罪』)は自ら映画脚本を執筆。アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『鳥』(1963)もハンターの脚本による。
 1950年代には、リチャード・マーステンRichard Marsten、ハント・コリンズHunt Collins、カート・キャノンCurt Cannonの筆名で短編・長編を数多く発表、その後、エズラ・ハノンEzra Hannon、ジョン・アボットJohn Abbottの筆名の作品も出している。
 マクベイン、ハンター、その他の筆名による作品は十数か国語に翻訳されており、推理作家としての業績を称(たた)えて、アメリカ探偵作家クラブから1985年度のグランド・マスター賞、1997年にノルウェーの推理作家団体リバートン・クラブからゴールデン・レボルバー賞、1998年には英国推理作家協会からカルティエ・ダイアモンド・ダガー賞を受賞、2000年には『ラスト・ダンス』によりフランクフルトe-Book賞を受賞した。[直井 明]
『エド・マクベイン著、井上一夫訳『警官嫌い』『凍った街』(ハヤカワ文庫) ▽エド・マクベイン著、井上一夫訳『キングの身代金』『ノクターン』(ハヤカワ・ミステリ文庫) ▽エド・マクベイン著、長野きよみ訳『最後の希望』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ) ▽エド・マクベイン著、山本博訳『ラスト・ダンス』『マネー、マネー、マネー』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ) ▽エド・マクベイン著、山本博訳『ビッグ・バッド・シティ』(ハヤカワ・ミステリ文庫) ▽エヴァン・ハンター著、井上一夫訳『暴力教室』(ハヤカワ文庫) ▽エヴァン・ハンター著、小林宏明訳『秘匿特権』(講談社文庫) ▽エヴァン・ハンター、エド・マクベイン著、山本博訳『キャンディーランド』(2001・早川書房) ▽直井明編『エド・マクベイン読本』(2000・早川書房)』

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