翻訳|nocturne
普通は静かで暝想的な性格の,夜を暗示する楽曲で,〈夜想曲〉と訳されることもある。ピアノ独奏用ノクターンは,1810年代にアイルランド出身のピアニスト,フィールドJohn Field(1782-1837)が創始し,ショパンがその頂点を形づくったロマンティックな夜の気分を特徴とするキャラクター・ピースである。分散和音的な伴奏をもつ旋律が二つ以上対照される明快な形式をとるのが普通で,3部形式などのリート形式,小規模なロンド形式のものが多い。一方ロマン主義文学の〈夜〉がしばしば奇怪な幻想を含んでいたのと同様に,ノクターンにも激しい感情表現がみられることがある。ノクターンを意味するドイツ語を題名とした(E.T.A. ホフマンの小説集と同じ題名でもある)シューマンの《ナハトシュテュッケNachtstücke》(1839)はその代表的な例である。オーケストラ曲にも《ノクチュルヌNocturnes》(1899)というフランス語題名のドビュッシーの名作があるように,この題名の用例はきわめて広い。おもに夜に野外で奏されるセレナードの類を指すイタリア語のノットゥルノnotturno,さらに〈夜の行列〉といった形で形容詞として使われた場合,そして〈夜の音楽〉が表現主義や自然の物音と結合した20世紀の作品まで含め,共通項は〈夜の気分〉くらいしか見当たらない。
執筆者:森 泰彦
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夜を思わせる瞑想(めいそう)的な雰囲気をもつ、ロマン派の楽曲の表題。おもにピアノ曲で用いられ、夜想曲とも訳される。1912年から出版され始めたJ・フィールドJohn Field(1782―1837)の19曲が最初といわれる。彼の作品では、当時新しく登場したダンパー・ペダルの機能を利用して、左手が広い音域にわたる分散和音の伴奏型を奏し、その上で右手が、イタリア・オペラのように細やかに飾られた優雅な旋律を歌う。このような書法は、ショパンの21の作品にも当てはまる。しかし、ショパンは、中央に劇的な部分を挿入することによって緊張感を与え、ピアノの表現力をさらに高めた。ショパン以後も、フォーレからサティに至るフランスの作曲家、チャイコフスキーをはじめとするロシアの作曲家、さらにはバルトークまで、ノクターンの人気は衰えず、作品例も多い。なお、オーケストラ曲としては、メンデルスゾーンの付随音楽『真夏の夜の夢』(1842)の第七曲、ドビュッシーの三楽章よりなる『夜想曲(ノクチュルヌ)』(1897~99)などがある。
[関根敏子]
…1803年ロシアに移住してから,独自の奏法を築き上げ,19世紀初めのピアノ音楽全盛期を代表する一人となった。ピアノによる抒情的表現を図り,ノクターンという曲種をつくり,ロマン主義時代の器楽の小品を豊かなものとし,ショパンの先駆者となった。【佐藤 允彦】。…
※「ノクターン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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