モーラム

百科事典マイペディア 「モーラム」の意味・わかりやすい解説

モーラム

タイ北東部およびラオスラオ人の伝統歌謡歌い手。古くから伝承されている旋律即興的な歌詞をつけて,ケーン伴奏にのって簡単な身振りで踊りながら歌う。結婚式や法事,祭りなどに欠かせないもので,伝説や男女の恋を歌うばかりでなく,難しい政治政策なども人びとにわかりやすく伝える。タイでは,1980年代後半以降,イサーン(タイ東北部)から首都バンコクへの出稼ぎ労働者の大量流入に伴い,これらの歌謡もバンコクに進出し,地方色を強く残したまま変貌して流行歌の一ジャンル名ともなっている。イサーンでは,1980年代後半以降,じっくり聴くよりは踊るためのモーラム・シンが人気を集めている。
→関連項目ルーク・トゥン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モーラム」の意味・わかりやすい解説

モーラム
Molam

ラオスおよびタイ東北部イサーン地方に伝承される歌謡芸能。ケーン (笙) の伴奏に即興の歌詞をつけて歌い,両手をゆっくりと動かしながら舞う。ケーンは,鼻呼吸によって数分間音を切ることなく演奏する。歌には,結婚式や祭りなどで歌われてきた伝統的なものから都会での出来事や状況を笑い話教訓を交えて歌ったものまである。山間部では,モーラムを通じて都会のニュースを知ることも多く,モーラムの歌師は情報を伝える語り部,あるいは教師・僧侶的な役割を果している。

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世界大百科事典(旧版)内のモーラムの言及

【民俗芸能】より

…多くの民俗芸能は,史実を脚色した題材をもち,過去に対するその時その時の現代的解釈として人々に支えられてきた。北部タイやラオスでのケーン(笙(しよう))を伴奏とするモーラムmōlam,ネパールでのサーランギーを伴奏とするガイネgaineには,そうした過去とならんで新しい話題(時事問題)なども織り込まれる。また,事実ないしその脚色ではなく虚構の世界を描く物語性をもった民俗芸能も多く,それらはしばしば勧善懲悪,二元論などの倫理観,世界観を表明するものと解釈することができる。…

※「モーラム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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