改訂新版 世界大百科事典 「ヨツメモ」の意味・わかりやすい解説
ヨツメモ (四目藻)
Tetraspora
世界各地の溝，小川，水田，沼，池などに生育する寒天質の群体性緑藻の1属で，和名は細胞が4個ずつ近接して位置することに由来する。細胞は直径5～10μmの球形で，内部に杯状の葉緑体をもち，前端に2本の鞭毛（べんもう）を出す。この鞭毛は偽鞭毛（ぎべんもう）（または偽繊毛（ぎせんもう））と呼ばれ，寒天質中に埋在し，運動性がなく，内部構造も中心部に2本の微小管を欠くなど，一般の鞭毛と異なる。群体はちぎれて増殖するほかに，2鞭毛をもつ遊走子による無性生殖と，同型の雌雄配偶子による有性生殖を行う。日本には次の4種の生育が知られ，それらは主に群体の形状により分類される。ヨツメモT.gelatinosa （Vaucher） Desv.の群体は長い袋状または耳たぶ状で，長さ50～60cmになる。日本各地に分布する。アミヨツメモT.lubrica （Roth） Ag.は，群体は不定形に広がるが，切れ込みができて網目状となる。日本各地に分布する。ヒモヨツメモT.cylindrica （Wahlenberg） Ag.は，群体は円筒形で，直径は1cmくらいであるが，長さは60cm以上にもなる。本州中部地方から生育の報告がある。T.lacustris Lemmermannは，群体は直径300μm以下の中空の球状体である。北海道春採湖と大沼から生育が報告されている。前記3種は付着性であるが，後者は浮遊性である。近縁のパルメラ属Palmellaやパルモディクチオン属Palmodictyonは，寒天質に埋在する細胞が偽鞭毛をもたないことで，区別される。
執筆者：千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報