日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライソゾーム病」の意味・わかりやすい解説
ライソゾーム病
らいそぞーむびょう
lysosomal storage disorders
細胞内に存在する小器官であるライソゾーム(リソゾーム)に含まれる加水分解酵素が先天的に欠損することで生ずる代謝異常の総称。リソゾーム病あるいはリソゾーム(ライソゾーム)蓄積症ともいい、その多くが常染色体潜性遺伝することが知られている。タンパク質、糖質、脂質などの分解を触媒するライソゾーム酵素の欠損のために、細胞内で不要となったこれらの物質が分解されずにライソゾーム内に老廃物として蓄積する。乳幼児期から学童期にかけておもに中枢神経障害を伴う症状が徐々にみられるようになり、成長するにつれて悪化の傾向をたどる。国の指定難病に指定されている。
欠損する酵素の種類によりさまざまな疾患がみられ、原因も明らかになっている。代表的な疾患としては、ゴーシェGaucher病、ニーマン‐ピックNiemann-Pick病、GM1・GM2ガングリオシドーシス、クラッベKrabbe病、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症、I-cell(アイセル)病、ガラクトシアリドーシス、ポンペPompe病、ファブリーFabry病などがある。症状はさまざまで、歩行障害、視覚・聴覚障害、言語障害、嚥下(えんげ)困難、けいれん、筋麻痺(まひ)、貧血、眼(め)のチェリーレッド斑(はん)などのほか、肝脾腫(ひしゅ)、心肥大、骨関節の変形などを伴うものもある。これらの症状が年齢とともに進行し、幼児期や小児期に死に至るものもある。一方で、軽症型の場合には健常者とほとんど変わりない寿命の人もいる。
日本における発症率はライソゾーム病全体で7000人に1人の確率とされている。欠損酵素の補充療法や造血幹細胞移植等で治療可能なものもあるが、完治に至る有効な治療法はみつかっておらず、遺伝子治療が研究段階にある。
[編集部 2024年11月18日]