日本大百科全書(ニッポニカ) 「ふしぎの国のアリス」の意味・わかりやすい解説
ふしぎの国のアリス
ふしぎのくにのありす
Alice's Adventures in Wonderland
イギリス19世紀の作家ルイス・キャロルの児童向けファンタジー。最初は同名の少女アリス・リデルのために語られたものが、1865年にテニエルの挿絵入りで出版されて評判をよび、いまでは世界数十か国語に訳され、親しまれている。夏の昼下がり、アリスはふと見かけた白兎(しろうさぎ)の後を追って兎穴に潜り込み、地下の不思議の国に行き着く。この国では、食べ物しだいで身の丈が伸び縮みしたり、トランプのカードたちが法廷を開いていたり、およそ地上の生活では考えられないことばかり起こる。登場するのはいずれも、イギリスの民謡や伝説などで古くから子供たちに親しまれてきた名前、もしくはそのパロディーで、この異形の群れのなかを健全な常識人のアリスは思うさま引きずり回され、最後に夢から覚めてほっとする。その徹底したナンセンスの精神と、語呂(ごろ)合せや新造語の氾濫(はんらん)は、その後の世界幻想文学史上に多くの影響をもたらした。姉妹編に『鏡の国のアリス』がある。
[矢川澄子]
『矢川澄子訳『ふしぎの国のアリス』(新潮文庫)』▽『生野幸吉訳『鏡の国のアリス』(1972・福音館書店)』