万県事件（読み）ばんけんじけん

改訂新版　世界大百科事典

万県事件 (ばんけんじけん)

1926年9月，イギリス軍艦による中国四川省万県市街砲撃事件。国民革命の進展に恐怖した列強はたびたび武力干渉による鎮圧をくわだてたが，その最大のものの一つである。四川軍閥に交渉のために勾留されたイギリス商船の釈放を口実にイギリス軍が万県を砲撃し，数千人を死傷させ，数百軒を破壊した。しかしこの暴虐に対し全国的に抗議がまきおこったため，イギリスの意図は裏目にでる結果となった。
執筆者：狭間 直樹

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

万県事件
ばんけんじけん

1926年9月5日，中国の万県 (現重慶直轄市万州) でイギリス砲艦が市街を砲撃した事件。8月 29日，四川軍閥楊森麾下の軍隊が揚子江上流の雲陽でイギリス汽船を拿捕し，これを万県に回航させて抑留し，同日万県に停泊中の他のイギリス汽船2隻も抑留された。イギリス側は楊森に対して厳重に抗議しイギリス船の釈放を要求したが効果がなかったので，9月5日救援隊を派遣して抑留中のイギリス船から船員を救出するとともに，イギリス砲艦が万県市内を砲撃し，家屋数十を焼き，市民に数百の死傷者を出した。この事件は中国の民衆の反英感情を著しく悪化させ，揚子江沿岸の各地はもとより，芝罘，上海，天津，北京，奉天などに反英運動を激発させた。アメリカと日本は不介入の態度を示し，9月末アメリカの調停によりイギリス側が譲歩して地方的問題として解決された。

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