不比例説(読み)ふひれいせつ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不比例説
ふひれいせつ
theory of disproportion英語
Disproportionalittstheorieドイツ語

経済恐慌の原因を生産諸部門間の不均衡に求める学説で、不均衡説ともよばれる。
 古典派経済学以来、経済恐慌の理解は大きく二つに分かれていた。まず、セーの法則を承認し、生産の不均衡による部分的過剰生産の存在しか認めなかったD・リカードなどと、大衆の消費力の不足による全般的過剰生産の形成という過少消費説を主張するT・R・マルサス、J・シスモンディなどとの論争が行われた。過少消費説が、資本主義の自立的発展を否定するという欠点をもっていた反面で、部分的過剰生産論は、現実におこっている全般的過剰生産や恐慌の周期性を説明できないという理論的欠陥があった。
 K・マルクスによる両者の批判を経て、論争はさらに後まで継承された。不比例説を代表したのは、ロシアの経済学者トゥガン・バラノフスキーと、彼を継承したドイツのR・ヒルファーディングであった。古典派の欠陥を克服しようとした彼らは、部門間の均衡をもたらす価格の調整機構を麻痺(まひ)させ恐慌を周期的に引き起こす要因として、固定資本の存在に着目した。不況期に蓄積された貸付資本は、不況末期から好況期にかけて集中的に生産資本、とりわけ固定資本に投下される。その際、固定資本は建設期間が長いので、固定資本の大きな部門ほど生産力化が遅れ、需給ギャップ(需要>供給)がそれだけ大きくなり価格が高騰するので、それに引きずられて潜在的な過剰投資が累積される。こうして形成された固定資本が一挙に生産力化されるならば、当該部門では逆の需給ギャップが生じ、しかも固定資本が大きいことが資本移動を困難にするので均衡の回復は遅れることになる。この不均衡から生じる需要の減退と、貸付資本の不足による信用の収縮によって、部分的過剰生産は全般的過剰生産へと波及する、というのが彼らの理解である。彼らの議論は、生産的消費(投資)と個人的消費の動きをまったく切り離してしまうという難点をもっており、過少消費説をとったK・カウツキーやローザ・ルクセンブルクによって批判され、二つの立場の論争は、さらに繰り返されることになったのである。[佐々木秀太]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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