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恐慌 きょうこう crisis; panic

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

恐慌
きょうこう
crisis; panic

景気循環の好況局面における過大な設備投資が不況局面の出発点において設備過剰をもたらし,生産と消費の間に大きな不均衡が起り,商品の過剰生産が一般化して価格が暴落し,企業倒産や失業が大規模に発生して生産,雇用,所得が急激かつ大幅に減少する現象。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

恐慌

景気後退時に株価の暴落、物価の下落、資金の貸し借りのまひ、企業の倒産や失業などが大規模に起きること。1930年代の大恐慌の際は日本も深刻な景気後退に陥り、「昭和恐慌」と名付けられた。バブル崩壊後の日本の金融危機は恐慌とは呼ばれなかったが、政府は「日本発の世界恐慌の引き金は引かない」と繰り返していた。

(2008-10-01 朝日新聞 朝刊 1総合)

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デジタル大辞泉の解説

きょう‐こう〔‐クワウ〕【恐慌】

[名](スル)
おそれあわてること。「恐慌をきたす」
「是(ここ)に於(おい)て誰(たれ)か―し、狼狽(ろうばい)し」〈紅葉金色夜叉
生産過剰などの原因により、景気が一挙に後退する現象。株価などの暴落、失業者や滞貨の増大、企業の倒産、銀行の取り付けなどの混乱が起こる。1929年に米国から始まり、全世界に及んだ大恐慌が有名。パニック

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百科事典マイペディアの解説

恐慌【きょうこう】

クライシスcrisisまたはパニックpanicの訳語。資本主義経済では利潤を目的としてますます大量の商品が生産されるが,その経費にあたる賃金はできるだけ低くおさえられるため,生産の増大に対して消費が伴わず,商品の過剰生産が起こり,価格暴落,破産,失業などの景気循環の最悪の危機的局面が生ずる。
→関連項目シスモンディ資本主義修正資本主義世界恐慌パニックホブソンロートベルトゥス

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世界大百科事典 第2版の解説

きょうこう【恐慌 crisis】

資本主義的商品経済にしばしばくり返されてきた経済的な攪乱(かくらん),麻痺(まひ),破綻(はたん)状態を指す。原語に2系統あり,そのうち,クライシスはもともとは病気の危機的峠を意味し,パニックはギリシア神話の牧神パンの気まぐれのひきおこす狼狽(ろうばい)を意味していた。それゆえ,パニックは資本主義経済の市場機構に生ずる急性的崩壊現象にあてはまり,クライシスはそれをも含めより構造的な経済危機に妥当する用語であって,恐慌という訳語は,文脈によってその両方の事象を含みうる。

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大辞林 第三版の解説

きょうこう【恐慌】

( 名 ) スル
〘経〙 景気変動の後退局面で、需要の急速な低下、商品の過剰、物価の下落、信用関係麻痺まひ、企業倒産、失業が急激かつ大規模に生じ、一時的に経済活動全体が麻痺すること。経済恐慌。パニック。
おそれあわてること。 「 -をきたす」 「 -し、狼狽し、悩乱し/金色夜叉 紅葉」 〔「哲学字彙」(1881年)に panic の訳語として「驚慌」とある。「恐慌」と表記されるのは一九世紀末〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

恐慌
きょうこう
crisis英語
Kriseドイツ語
criseフランス語

産業革命を経て機械制大工業の勝利によって資本主義生産が産業資本の再生産軌道を確立すると、自ら無限に発展する社会的生産力の発揮を確保したが、同時に自らの生産構造の仕組みにおいてこの無限に発展する社会的生産力に対する一つの桎梏(しっこく)が現れた。社会的生産力の無限の発展のなかに、累積した資本主義生産のいっさいの要素の矛盾、資本主義の根本的矛盾が、「世界市場の大暴風雨」(マルクス)、「資本主義的生産の全機構震憾(しんかん)」(山田盛太郎(もりたろう))として爆発する。このように資本主義の諸矛盾が一挙に表面化し、その矛盾を暴力的に調整し、現実的に解決するのが恐慌である。したがって恐慌は、失業と同じく資本主義生産に固有な現象であり、再生産過程の攪乱(かくらん)として周期的に現れる。
 この周期的におこる再生産過程での生産力の破壊と停滞が資本主義的本質を露呈するのは、その形態が資本主義以前のそれと異なるからである。資本主義以前の再生産過程の攪乱・収縮は、凶作、飢饉(ききん)、悪疫、戦争など総じて生産の縮小ないし過小生産によっておこり、社会の欲望に対し生産が絶対的に少なく、欲望を満たしえないための混乱であった。ところが資本主義社会ではまったくその逆で、商品をあまりにも生産しすぎたために販売できず、消費されないがゆえに再生産過程が攪乱され、社会の生産力が破壊されるというものである。この資本主義社会の商品の周期的過剰生産は、大量の販売不能、支払い不能、そしてその結果として滞貨増大、倒産、工場閉鎖、信用崩壊、株価暴落、賃金切下げ、解雇・失業の増大を引き起こすのであるが、これは商品が社会の欲望に対して絶対的に過剰だからおこるのではない。その意味では資本主義社会には貧困や満たされない欲望はいくらでもある。そうではなく、過剰に生産された商品で満たされざる欲望を充足させようとすれば、ますます再生産は混乱し、社会の生産力を破壊するのである。これはこれまでの歴史にない新しい現象であって、「豊富のなかの貧困」として特徴づけられるもの、すなわち一方における商品の過剰、それほどの豊かな富と、他方における貧困、すなわち満たされざる欲望の同時的存在である。したがってこの過剰生産は、支払い能力ある需要(欲望)に対し、売られる商品が過剰に生産されたのである。資本家の側からは支払い能力ある需要とは一定の利潤が得られることであるから、この過剰生産は、彼にとっては一定の利潤、平均利潤を伴って売れないという意味での過剰、すなわち相対的な過剰生産なのである。この相対的過剰生産こそ恐慌の基本現象にほかならない。[海道勝稔]

商品流通と恐慌の可能性――恐慌の基本形態

このような商品の販売不能ということは、そもそも生産された生産物が商品形態をとったことに起因する。他人のための使用価値をもつ商品は販売されなければならないが、商品は生産されたことで販売も保証されるわけではない。商品はまず貨幣と交換してその価値を実現する必要があり、これによって初めて完全に商品たりうるのである。したがって商品生産・商品流通のもとにおいては、どの商品も一度貨幣という特殊な商品に置き換えられたのちに、初めて他の商品との交換に入るという関係になる。これは、相互に自己の生産物を提供し相手の生産物を求める一個同一の関係が成立する直接的生産物交換とはまったく異なる。商品流通では貨幣が流通手段として介在するがゆえに販売と購買とに分離されている(一商品―〈販売〉―貨幣―〈購買〉―他の商品)。販売では、どの商品も貨幣へ「命がけの飛躍」をしてその価値実現を急ぐが、購買では、貨幣はいつでもどの商品とでも交換できるから、すぐにそれで次の商品を購買する必要はない。そのため商品流通では販売が終わり貨幣を得たところで流通の網の目が中断されがちであり、そこでそれに対応する商品の販売が不能になる可能性がある。こうした全一連の関連のもとで、商品の販売不能が社会的規模で連鎖的におこりうるのである。
 さらに貨幣が支払い手段の機能を営む発展した商品流通では、信用販売の網の目を伴うことになり、商品の掛け売りと一定期間後のその商品の価格の実現とが場所的のみならず時間的にも分離する。そのことで販売不能がおこりうることは貨幣が流通手段として機能する場合と同じで、ここにも商品の販売不能がおこる可能性がある。
 商品流通におけるこれら販売と購買との分離、商品の掛け売りとその価格実現との分離は、商品の販売不能という形態での恐慌の可能性を示すものであるが、それは、商品に内在的な使用価値と価値との対立、私的労働と社会的労働との対立、特殊具体的労働と抽象的人間労働との対立という商品生産の矛盾に基づき、その運動形態として現れている。
 このように可能性の形としてではあるが、商品の生産過程がもつ矛盾が商品の流通過程で現れることは、商品の販売不能、それに基づく再生産の攪乱という恐慌の基本形態を示しているのである。[海道勝稔]

資本主義生産と恐慌の必然性

これら商品流通の網の目と連鎖の全体は、資本主義の総流通過程を構成し、これを通じて資本主義の総再生産が行われる。ここでは先の恐慌の可能性は、よりいっそう拡大されるだけでなく、恐慌として爆発する資本の生産過程に内在する根本的矛盾が現れてくる。
 資本主義生産は、協業と分業による集団労働および生産手段の集団的使用という社会的性格をもつのに対し、その社会的生産物は資本家の私的取得に帰し、利潤を求めての強制法則となって現れるという矛盾となっている。そして資本家は、絶えず蓄積と生産力を無限に発展させ、生産過程でできる限り多く剰余価値を搾取し、それをふたたび蓄積に回して大量生産を進めるが、この大量生産された商品の大多数の購買者である直接生産者の労働者の賃金は、これを最低限に制限する傾向をもつ。したがって商品の販売、剰余価値(=利潤)の実現は、社会の消費欲望一般に限界づけられている。この生産と消費の矛盾こそ、資本主義の根本的矛盾である生産の社会的性格とその取得の私的資本主義的形態との矛盾から直接に引き出せる矛盾である。そしてこの矛盾こそ、周期的過剰生産恐慌の窮極の根拠である。
 先の資本主義の総再生産過程は、あらゆる生産部門(大別すれば生産手段生産部門と消費資料生産部門に分かれる)とその連関を包括し、そこで生産されるあらゆる商品を価値(不変資本、可変資本、剰余価値に分かれる)からと素材(生産手段と消費資料とに分かれる)からみて相互に補填(ほてん)して再生産するが、その流通による補填の交錯は、資本と資本との流通、資本と所得との流通、所得と所得との流通に総括される。社会全体としては、資本と資本との流通は生産的消費のみに限られ、したがって生産の発展のみを現し、資本と所得との流通は生産と消費との関連を現し、所得と所得との流通は個人的消費を内容とすることに限られて消費を現す。そして社会の生産力の発展は、資本と資本との流通をもっとも著しく拡大し、所得と所得との流通はもっとも遅れて発展する。こうして資本主義生産過程でみられた先の恐慌の窮極の根拠としての生産と消費の矛盾は、総再生産過程においては生産諸部門間の比例性を通じて消費の拡大なき生産の拡大――それこそ矛盾である――として表示される。したがってこの総再生産過程においては恐慌の必然性が基礎づけられており、恐慌が資本主義の全機構震撼(しんかん)であることが示される。[海道勝稔]

二つの主要な恐慌学説

以上で、恐慌は資本主義に固有で、必然であることが明らかとなったので、ここで従来陥りやすい誤った二つの代表的恐慌論をみておこう。
 一つは不比例説で、トゥガン・バラノフスキーやヒルファーディングが主張した。この説は、社会的総商品が実現されるには社会的総再生産の各部分の間に一連の比例性が要請されるが、資本主義生産の無政府性のもとでは不比例による恐慌は避けられないというものである。比例が正しく保たれていれば、生産は消費制限から完全に独立して発展し恐慌はおこらないとして生産と消費の矛盾を否定する。しかし、不比例説では、部分的恐慌や生産の偶然的過不足による不均衡のみをみることになり、全機構震撼としての全般的な過剰生産恐慌は説明できない。
 他は過少消費説で、古くはシスモンディ、ロードベルトゥスが唱えたが、カウツキー、ローザ・ルクセンブルク、ブハーリン、スウィージーなどがその代表者である。これは、資本主義的搾取に基づく大衆の過少消費を多かれ少なかれ恐慌の直接の原因とする理論である。しかし、過少消費と過剰生産は直結して事態の表裏をいう同義反復にすぎず、商品の実現における生産的消費の役割を無視し、なんらかの形で消費資料の過剰生産に矮小(わいしょう)化される。過少消費を恐慌の直接の原因とすることは、恐慌の直前には労働者の賃金は騰貴するという事実にも反し、全機構震撼としての恐慌は明らかにされない。以上の2説の誤りは今日に至るまで再生産されている。[海道勝稔]

恐慌の現実性

資本主義の全機構震撼としての恐慌は、産業循環の一局面として周期的形態をとる。その物質的基礎をなすのが固定資本の更新と拡大の独特な回転様式である。したがって産業循環も、生産の拡大を左右する条件である生産手段のなかの固定資本投資の波の変化によって条件づけられる。なぜなら、固定資本の独特の運動は、投下されるときには固定設備商品に対する需要を一挙に構成し、その設備建設期間のあいだ一方的購買が継続するが、建設が終わり新生産力として稼動すると、その後現物で更新されるまで、長期間にわたって一方的に供給を続けるからである。こうした固定資本の独特の運動の波が、狭隘(きょうあい)な個人的消費制限の基礎上で超過利潤を求める個別資本の無政府的競争と信用拡大のうちに展開するとき、恐慌は初めてその現実性と周期性の条件が与えられてくる。すなわち、価格変動によって調整しきれない、総生産と総需要の矛盾の潜在的累積による資本の過剰蓄積と、それを基礎として始まる商品の過剰生産が、一定期間を経て顕在化、爆発する現実性が与えられるのである。
 さらに産業のある部門が世界貿易まで行いうるようになると、資本主義的にその部門が確立したことを意味し、それ自体世界市場を席巻(せっけん)していくから、恐慌も世界市場恐慌となって現れる。資本主義生産に固有な恐慌は、世界市場恐慌となって爆発する。[海道勝稔]

恐慌の歴史

資本主義生産の確立を明確にする過剰生産恐慌は1825年をもって始まる。それ以来、恐慌は周期的循環性をもって現れた。すなわち、第二次世界大戦後のやや不規則な時期を除けば、ほぼ10年前後の間隔(歴史的には10年に近い形で短くなっている)で勃発(ぼっぱつ)している。
 1825年以前の歴史をひもとけば、1673年のオランダのチューリップの球根への投機の過熱と崩壊によるチューリップ恐慌、1720年のフランスのジョン・ローによる株式投機恐慌、同年のイギリスの南海会社をめぐる株式投機の過熱と崩壊(南海泡沫(ほうまつ)事件)による恐慌のほか、18世紀末から19世紀初めにかけて勃発した過渡的恐慌とよばれる1793年、1797年、1810年、1815年、1819年のイギリスの諸恐慌がある。過渡的恐慌とよばれるのは、これらがナポレオン戦争の勃発あるいは終結などの資本主義生産外の諸条件によってもたらされたと同時に、他方ではそこで資本主義内部の工業生産と商業が決定的役割をもつことによって勃発したからである。[海道勝稔]
大工業時代の恐慌
1825年には産業革命を終え機械制大工業を確立したイギリスが、ラテンアメリカ市場の開拓の結果、木綿工業を中心に初めて自生的に全般的過剰生産恐慌となった。これはドイツ、オランダも巻き込んだ。次の1836年恐慌もイギリスを中心に対米輸出拡大から投機・過剰生産となり、信用恐慌を伴った。過剰生産はアメリカ、フランスにも勃発した。さらに1842年にはイギリスに後産(あとざん)恐慌がおこり、1844年に金融制度上ピール銀行条令を制定したが、それ以後の肝心な恐慌のときには恐慌対策としては役だたなかった。1847年恐慌もイギリスを中心とするもので、鉄道建設と国際的性格が決定的役割をもった過剰生産恐慌であった。フランス、アメリカでは明確な経過をたどらなかったが、ドイツはイギリスの影響を受けた。イギリスではこの社会不安は、チャーティスト運動となっていった。
 1857年恐慌は、初めての世界恐慌であった。アメリカの鉄道建設の崩壊に始まって、イギリス工業に拡大していった。ドイツも初めて全般的過剰生産となり、世界恐慌の一環を構成した。フランスも同じく鉄道建設から過剰生産にみまわれた。こうして主要資本主義国に世界恐慌は拡大していった。主要資本主義国が世界工業生産の5分の4を占め、主要資本主義国の間で社会的再生産過程の相互連関が成立して単一の世界市場における産業循環に合体していたからである。
 1866年の恐慌は、アメリカの南北戦争による綿花飢饉(ききん)や、プロイセン・オーストリア戦争にも影響されたが、イギリスでは最大の信用機関であったオーバーレンド・ガーニー・カンパニーの破産という金融的性格をもった。この恐慌は、時期と部門と各国における発展が不均等であって、全体として劇的形態をとって展開するということはなかった。
 1873年恐慌は、19世紀でもっとも深刻、包括的なものであった。ドイツ、オーストリア、ハンガリー、アメリカを中心に、イギリス、フランスその他の諸国を巻き込み、もっとも破壊的な信用恐慌が襲ったが、とくに独占への傾斜をもち始めたドイツ、アメリカできわめて激しく、鉄の生産に一大打撃を与えた。この1873年恐慌を境にして資本主義は独占への移行の準備を決定的なものにした。
 この恐慌以後、1882年恐慌も1890年恐慌(フランスは1891年、アメリカは1893年に勃発)も、恐慌の中心は軽工業から重工業に移った。これらの恐慌に共通なのは、1870年代以前のような急激な生産・取引の停止、短期の不況をとらず、「相対的に長くてはっきりしない不況」(エンゲルス)となった。つまり、19世紀の終わり4分の1期は停滞の様相を示すが、それはまた長期にわたるこの時期の農業恐慌を伴っていた。[海道勝稔]
独占時代の恐慌
19世紀から20世紀への世紀転換期ごろにおける独占資本主義の確立は、この「構造的不況」を克服したが、ロシアに端を発した1900年恐慌、ついでこれまでのどれに比べても過剰生産が激しかった1907年の恐慌がおこった。両恐慌は、電気、化学、鉄鋼の重工業が発展したアメリカ、ドイツにおける独占の展開、鉄道熱再現による恐慌の激烈さ、イギリス、フランスの造船、鉄鋼業の過剰生産の激しさが中心となった。循環の周期はほぼ7年に短縮し、アメリカ、ドイツとイギリス、フランスとの循環の不均等が現れた。
 第一次世界大戦直前の1913年には恐慌が準備されていたが、それは世界戦争にとってかわっていった。第一次世界大戦後は、資本主義は全般的危機、構造的内部矛盾、不均等発展により、以前とは異なって高揚局面がきわめて不安定となった。日本、アメリカなど隔洋諸国でおこった1920年恐慌は、戦後調整といった性格のものであった。
 次にアメリカに端を発した1929年恐慌(大恐慌)は、1920年代の発展の中心であった自動車、住宅建設、石油、それらの関連部門を包括し、全工業部門を飲み込んだのみならず、農業の慢性的不況をも含み、ソビエトを除く全世界に及んだ。過剰生産は未曽有(みぞう)の激烈さであり、生産は高揚時の半分に落ち、1400万人の完全失業者が街頭にほうり出された。多数の銀行も破産し、これらは1932年の夏にやっと底に達したものの、続いて金融恐慌となり、全アメリカの銀行閉鎖、本位貨恐慌となって資本主義の自動調整力を喪失し、「特殊な不況」をもたらした。したがって次の1937年の恐慌は、それに先行する繁栄局面を経過することなく開始された。先行する局面は、ニューディールにみられるような、どれが崩れても重大な破綻(はたん)となる、きわめて限られた雑多な条件の不安定な結合であった。この1937年恐慌は、武力侵略をもったドイツ、日本、イタリアではその影響はみられず、戦争経済に全面的に移行しなかったアメリカからイギリス、フランス、カナダ、ベルギー、スウェーデンへと急速に波及していった。このことから各国は軍拡の道をたどり、比較的短期間で回復に向かった。
 第二次世界大戦後の全般的危機の深化と国家独占資本主義の矛盾の展開は、第一次世界大戦後とは異なって1929年恐慌のような激烈な形態はみられず、価格低落よりも操業短縮、1960年代の各国循環の非同時性が顕著となった。
 戦後初めての恐慌は1948~49年恐慌で、民需転換、戦後世界市場への大挙進出によるアメリカの急激な設備投資からの過剰生産を中心におこった。次の1957~58年恐慌は、アメリカで技術革新を背景にもっとも激しく、同時に西ヨーロッパの生産停滞、日本の「鍋底(なべぞこ)不況」など、すべての国を戦後初めて同時に巻き込んだ。発展途上国では国際原料恐慌となった。だが1960年代以降、景気停滞=恐慌は頻発したが、各国の非同時性が目だった。それらはアメリカのベトナム戦争介入、北爆開始やドル危機=国際通貨危機、ベトナムからの撤退、物価騰貴と絡まって若干の変動の上下のうちに推移したが、1971年のニクソン・ショック、1973年のオイル・ショック以来、1960年代と異なり景気の停滞の長期化がみられるうち、1978年の第二次オイル・ショックによって停滞のなかでの物価騰貴となって、いわゆるスタグフレーション現象をおこしている。そして1982~83年には各国での不況=恐慌の同時性となって現れた。とくに鉄鋼、自動車、建設の諸部門では、アメリカおよび西ヨーロッパ(EC)において深刻であった。[海道勝稔]
『井汲卓一他編『講座 恐慌論』全4巻(1958~59・東洋経済新報社) ▽宇高基輔・南克己「『資本論』における恐慌理論の基本構成」(『土地制度史学』第4号所収・1959・農林統計協会) ▽富塚良三著『恐慌論研究』(1962・未来社) ▽久留間鮫造編『マルクス経済学レキシコン6~9 恐慌』(1972~76・大月書店)』

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世界大百科事典内の恐慌の言及

【パニック】より

…経済学では〈経済恐慌〉を意味するが,社会学や心理学では不特定多数の群衆が引き起こす〈集合行動collective behavior〉の一種をパニックと呼んでいる。ギリシア神話における羊や牛の守護神パンPanに起源をもつ。狭義には危険からの無目的な逃走を指し,たとえばスメルサーN.Smelser(1930‐ )は〈ヒステリー的信念にもとづく集合的逃走〉,またブラウンR.W.Brown(1915‐ )は〈感情的で非合理的な逃走反応〉と定義している。…

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