世界特許(読み)セカイトッキョ(その他表記)world patent

デジタル大辞泉 「世界特許」の意味・読み・例文・類語

せかい‐とっきょ〔‐トクキヨ〕【世界特許】

一つの国で認められた特許が他の国でも無審査で認められる制度国際特許
[補説]構想段階の概念で、現在、特許の審査は各国で行われている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界特許」の意味・わかりやすい解説

世界特許
せかいとっきょ
world patent

一つの国・地域で特許承認されれば、他の多くの国・地域で審査を受けなくても通用する仕組み。2006年(平成18)に日米欧など主要41か国が東京に集まった国際会議で、世界特許へ向けた条約づくりが始まった。現在、特許は国・地域ごとに運営されており、原則他国・地域では通用しないが、世界特許が実現すれば、申請手続の簡素化や期間短縮、国際係争の減少につながると期待されている。

 同じ発明に関する特許が重なった場合、日本やヨーロッパでは先に出願したほうに特許を認める先願主義(せんがんしゅぎ)first to file systemをとっている。一方、アメリカは先に発明したほうに特許を与える先発明主義(せんはつめいしゅぎ)first to invent systemで、この立場の違いが特許基準を国際的に統一する障害となってきた。このため企業は自国以外の他国・地域にも特許出願する必要があり、世界の特許出願件数は170万件を超えている。

 しかし2006年にアメリカが先願主義を採用することに合意世界知的所有権機関WIPO)では、主要国の間で発明が特許に値するかどうかの審査基準の統一や、相互承認の枠組みづくりを進めている。2007年には中国も世界特許構想に加わったが、先進国途上国対立で世界特許条約づくりは難航している。

[編集部]

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知恵蔵 「世界特許」の解説

世界特許

特許権などの産業財産権の保護については、1883年のパリ条約以来、様々な国際的な合意があるが、ある国で登録された特許権は他の条約締結国においても自動的に特許登録されて保護されるものではない。各国はその産業政策上、国ごとに特許要件や手続きなどが異なり独自の特許制度を有している。すなわち、特許権は国別特許という形でのみ存在し、著作権のように条約締結国間において無審査で自動的に相互承認されて保護されるわけではない。従って、1つの規範で定義された世界特許はなく、世界で通用する特許権を持つためには世界中の国々に個別に特許申請し登録する必要がある。このような不都合を克服するために、1970年に特許協力条約(PCT)が締結され、国ごとの個別出願負担の軽減や規範の整理などがなされた。しかし、国際的調和に向けた更なる国際条約締結には時間がかかるために、PCT出願件数で全世界の約8割を占める日米欧三極特許庁間では、迅速で実効性のある実体的調和が企図されている。これは将来的に、三極特許庁間で特許権を相互承認しようとするもので、特許権の早期確立を図るメリットがあるほか、出願者の費用負担や当局の審査負担の軽減にもなりうる。

(桜井勉 日本産業研究所代表 / 2007年)

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