朝日日本歴史人物事典 「中村兵左衛門」の解説
中村兵左衛門(9代)
生年:生年不詳
江戸中期の商人。常陸国(茨城県)下館藩の城下で業を営む。別名左教,秋茂。俳号は風皇。中村家は代々上層町人として町年寄や本陣の役務をなす一方,広く商業活動を営む商家である。17世紀後半期には大和,摂津の繰綿を大坂,江戸を介して奥州にまで送る遠隔地商業を営み,数千両の取り引きを行っていた。9代兵左衛門の時代(享保期・18世紀前半)には醤油醸造経営が盛んであり,江戸に販売店をもうけ,小樽で1万樽の出荷があった。俳句もたしなみ,与謝蕪村とも親交がある。その後,中村家の主業は周辺地域で集荷する 晒木綿の江戸問屋への買次業務に移り,13代兵左衛門は下館藩の農村「復興」策をめぐって,二宮尊徳と関係が深かったといわれる。江戸期における,地方に在住する有力商人の多彩な活動がうかがわれる。<参考文献>林玲子「下館藩における尊徳仕法の背景」(『茨城県史研究』6号)
(谷本雅之)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報