日本大百科全書(ニッポニカ) 「事前防災行動計画」の意味・わかりやすい解説
事前防災行動計画
じぜんぼうさいこうどうけいかく
台風や遠地津波による被害が予測される場合、数日前から、いつ、だれが、何をするのか、という役割や行動を時系列に整理し、計画しておくこと。タイムラインtimelineや事前防災計画ともいう。これにより地域の災害対応の漏れを少なくし、関係者が具体的な行動をむだなくとれるようになるため、減災につながる可能性がある。
台風を例にすれば、台風の上陸時間を0時間(ゼロアワー)と設定し、その5日前の120時間前から上陸3日後の72時間後までを時間軸に従って細分化し、防災対策にかかわる気象庁、自治体、消防団、警察、河川や山林の管理者などの行動を一覧表にしておく。関係機関がそれぞれの経験を共有し、過去の災害を振り返って計画することにより、先を見越した対応が可能になる。
事前防災行動計画は、2011年にアメリカを襲ったハリケーン、アイリーンの経験を基に、ニュー・ジャージー州危機管理局がタイムラインを作成したことがきっかけとなり始まった。アメリカでは翌2012年に発生したハリケーン、サンディで実際にタイムラインが活用され、人的被害の最小化につながった。日本でも大規模な自然災害が多発していることから、国や地方公共団体、企業などが、これまでの災害情報に基づいた地域防災計画、被害想定、ハザードマップなどを参考にしながら、各主体がそれぞれどのような行動をとるべきかを具体化し、事前防災行動計画としてまとめる動きが広がっている。
[編集部]