異常な自然現象によって引き起こされる災害。日本列島は、地震のプレートテクトニクス理論によると、ユーラシアプレートの上に位置し、太平洋プレートおよびフィリピン海プレートがその下にもぐり込んでいる。地形的には環太平洋山系の一部にあたり、造山活動を続けており、急峻(きゅうしゅん)な山岳地帯が多く、そこに源を発する急流河川の下流部に小さな平野が発達しているという地形である。また、気象的には台風の常襲コースにあたるほか、海洋性と大陸性気団の交錯する位置にあたるため世界有数の多雨地域であることなどが特徴である。したがって日本は、地震、火山噴火、台風、前線、温帯低気圧による風水害、高潮、地すべり、山崩れ、干魃(かんばつ)、冷害などによる災害が発生しやすい自然条件下にあるといえる。自然災害の原因はこのような自然的条件に伴うものが主であるが、都市地域を中心とする急激な人口増加、宅地造成をはじめとする開発行為を促進させる社会的条件が、台風、集中豪雨などがあった場合における地すべり、崖(がけ)崩れ、洪水、高潮などによる被害を増大させる要因になっていることが指摘されている。
『防災白書』(2010年版)によると、昭和20~30年代前半の自然災害は死者・行方不明者数が1000人を超える大きなものが頻発していた。しかし、5000人以上の死者を出した1959年(昭和34)の伊勢湾台風以降は死者・行方不明者は著しく減少し、長期的にみると逓減(ていげん)傾向にあり、1980年代以降は6000人以上の死者を出した阪神・淡路大震災が発生した1995年(平成7)を除き、年間100~200人程度が大勢を占めるに至っている。とはいうものの、豪雨、台風等自然災害による被害は依然として毎年繰り返し発生しているのも事実である。したがって災害を未然に防止し、発生した場合には被害の拡大を防止し、その復旧を速やかに図るなど、防災に関する対策は依然として必要とされている。
災害対策基本法第2条1号では、災害は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義している。この場合の政令で定める原因としては、放射性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴う船舶の沈没その他の大規模な事故と規定されている(災害対策基本法施行令第1条)。このうち、自然災害といわれるものは「暴風、豪雨……その他の異常な自然現象により生じる被害」をいい、その他の異常な自然現象としては、冷害、地すべり、山崩れ、崖崩れなどがあげられるが、その範囲については種々判断されているところである。
[次郎丸誠男]
『防災行政研究会編『逐条解説 災害対策基本法』第2次改訂版(2002・ぎょうせい)』▽『内閣府編『防災白書』平成22年版(2010・佐伯印刷)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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